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僕が本当に面白いと思うこと

6月3日に京都で一人コントライブします。よかったらどうぞ。

R-1ぐらんぷり2017感想~「第四の壁」に注目して Aブロックまで

やっぱりここ最近の賞レースの傾向の、ショー感が強い大会でしたね。ネタとしての作り込みや精度よりも現場受けと盛り上がり、という感じ。観客からのエーとかスゲエみたいな歓声も90年代のテレビを見ているようで、何かが一周した後のお笑い、っていう感じは物凄くしました。

優勝したアキラ100%さんやサンシャイン池崎さん、あるいは昨年のチャンピオンのハリウッドザコシショウさんのような「何でもありだろもう」みたいなヤケクソ感っていうのがガンガンウケるのは、00年代後半~10年代前半くらいの賞レースでは絶対なかっただろうなあとも。何かと世紀末ですね。

 

今回僕が気になったのは、「第四の壁」の有無がもたらす有利不利について。「第四の壁」とはすなわち、舞台の上にある壁の数のことを指していて、通常の後ろの壁、右の壁、左の壁のほかに、演者と観客との間に壁がある場合に、第四の壁がある、なんていいます。これはもともとは戯曲の用語だと僕は認識しているのですが、今回のR-1ではこの「第四の壁」の有無がそのまま有利不利に直結していたように思うのです。

すなわち、ネタが閉じているか開いているか、と言い換えてもいいです。観客席に向かって話しかける「第四の壁」がないパターンの芸の方が強く、閉じた世界の中でストーリーを展開する「第四の壁」があるパターンの芸は少し不利だったかなあと。この辺は観覧客を巻き込めるかっていう問題だとか、テレビの明るい舞台装置と相性がどれくらいよいかだとか、そういう問題でもあるのかなあと。

 

では、こういった観点を持ちつつ、各ネタちょこっと感想述べます。敬称略。

 

Aブロック

レイザーラモンRG「ドナルドトランプ」

KOCで話題になったネタを一人バージョンにアレンジした形でしたね。パターンとしては、キャラクターには入っているものの観客席に向かって語り掛けるタイプのネタで、『第四の壁』がないタイプのもの。

3分という時間はキャラクターを伝えきるには短い。まして、英語で話す必要があり、尊大な感じでもったいぶって話す必要のあるトランプをネタにしている以上、テンポと手数がどうしても犠牲になってしまう。もっと見たいところで終わってしまったような。オチはU字工事パターンの方が僕は好きです。

しかし、日本のお笑い芸人は社会批評をしないからクソだとか言っていたどこぞの世間知らずに見せつけてやりたいですよ。日本にRGあれり。

 

横澤夏子「自転車」

これ昔からあるネタですよね。何年か前に見て、横澤夏子めっちゃ面白いなあと初めて思ったネタだと思います。いない人がそこに存在しているように見せかけるタイプのオーソドックスな一人コントです。このネタの場合には男児、女児、乳児、犬、直接は出てこないおばあちゃん、すれ違ったママ友、と本人以外のたくさんの人物が3分で登場します。もちろん、『第四の壁』があるタイプのネタであり、観客と横澤さんは断絶されています。

横澤さんのネタはもともとすべて緻密な観察力と表現力ありきなので、人物を増やすことでコミュニケーションのネットワークを適度に複雑化させるのは正解だったように思います。横澤さん演じる主婦が子どもについてどう思っているのか、犬についてどう思っているのか、お婆さんについてどう思っているのかが的確に伝わって、それぞれの笑いどころになっていました。

悪気なく自分の生活世界の中でできるだけ合理的に生きているだけなのに、なんだか嫌みが出てしまう人間のありさまを的確に描写する横澤マジック。なんと写実的な芸風か。

しかしその写実性ゆえに、例えば「お婆ちゃん」と子どもに対して語り掛けていた人物について、電話では「お母さん」と呼び方を変えるところなどは、もしかしたらわかりにくく受け取られてしまったかもしれません。リアリティと伝わりやすさが時に矛盾することの難しさを感じます。

あの悪意ある必然的なオチ、あの味わいも、きっと多くの人には伝わらなかったんだろうなと思うとなんとも。

 

三浦マイルド「どちらからも聞こえてきそうな言葉」

二つの異なる場面で、同じセリフが違う意味で用いられることを扱った言葉遊びネタ。本人のキャラクターにほとんど色を付けないまま観客に向かって話すタイプの、『第四の壁』が全く存在しないネタですね。

圧倒的な密度、濃度であり、わかりやすい野球ネタ・あるあるネタベースのものからはじめ、だんだんに不条理やガラの悪さに重点を寄せていく構成も見事でした。ネタそのものの精度としてはこの手の言葉遊びフリップ芸の中では断トツでしょう。

とはいえ、元チャンピオンというハードルの高さなのか、あるいはネタがバキバキに仕上がり過ぎたことが災いしたのか、ウケ・審査結果ともにもっと行っていいだろうというものに。手数の多さ・一発一発のパンチの重さの両方があるがゆえに、もしかしたら観客の処理能力を超えてしまったのかなあとも。

 

サンシャイン池崎「ボン ボヤージュ」

おしゃれなコントが始まると見せかけて全くいつも通りという、本人が売れていることを逆手にとったアホすぎる導入。『第四の壁』があるとみせかけて全くない、いつも通り観客に向かって話しかけるというか、叫ぶというか、勢いと味と個性の爆発する池崎ワールド。長々とフってから一撃で仕留めるツカミのあるネタとしては、インポッシブルの最強戦士ムテキマンとか、セルライトスパの空手とかが浮かびます。

後半は各所で披露している鉄板ネタの「トトロ」に移行。一個一個のボケはすべて計算されつくしたナンセンスさで、随所に天丼を仕込んだり、伏線などの仕掛けを巧みに入れ込んだりと、キャラクターが目立つ割には台本が鬼のように強い。そうであるがゆえに、今回のようなキャッチーさ重視の審査傾向でも、あるいはもっと硬派な審査傾向でも、本人のキャラクターが受け入れられさえすれば評価される万能型なのでしょう。そのうち優勝するんだろうなあ。

 

Taiki Obonai 2014-