読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

僕が本当に面白いと思うこと

社会学とお笑いと日常生活

キングオブコント2016 各ネタ感想(ジグザグジギーまで)

お笑い

①しずる「突入」443点

「シナリオ」「能力者」「卓球」など、これまでにもKOCで数々の名作を残してきたしずる。その彼らのレパートリーの中でも、この「突入」は出色の出来だったのではないかと思います。系統としては彼らが初めてKOC決勝に進出した「冥土の土産」に近いのかな。二人ともバカで、結局何も起こらない、というプロット。ただ「冥土の土産」を披露した2009年から7年が経ち、彼らの演技力や表現力の幅が大きく広がり、なんとまあ圧倒的なコントになっていました。

あんまりにも良いネタで感動したので、ちょっと順を追って振り返ります。

序盤。まず何と言っても空気づくりが巧み。照明を落とした中で、丁寧に会話を積み上げて雰囲気を作る。「タバコ」「俺はお前についてく、いつでもそうしてきた」といった大オチのための伏線も張り、刑事二人の人間性や関係性も描写しながら世界観の地盤を固める。他の組と段違いに演技が上手くて安定している。

そして池田が電話に出るところから本ネタのオチが提示され、本編へ。やや暗めの照明がつきます。ここからは「誰もいない」「何も起こらない」の怒涛の大喜利。どんなフリからでも結局何も起こらないに収斂していくパート。

いったん左側に掃けて二階、小さく変調してスタントパートへ。2012年の能力者でも思ったけれど、ここはとにかく舞台の使い方が器用。だんだんヒートアップする池田の「誰もいない!」のボルテージもちょうどいい。「ああ、意味不明だ」も端的で正確で強フレーズ。そして流れ弾の強いボケ。

そして唐突に村上がカッコつけ始め、池田を攻撃。それをフリにして足をくじく。誰かいたのか?がフリになって、村上の側から「誰もいない」が出て立場が逆転。なんてキレイにフリとオチが続くのか。そしてこっから音楽が流れ始めて、やりきった感満載の二人がタバコを吸い、結局何も起こらない大オチへ。Why can't we be friendsをバックに笑い転げる二人。この終わり方にはたまらないものがありました。きっと予選では地鳴りのような笑いが轟いた場面なのだと思います。

いやあ、凄かった。思わず声が出ました。これ、歴代の優勝ネタと比べても全く遜色ないネタでしょう。出来の良い映画を見たような過剰に爽やかな後味といい、非のつけどころのないネタでした。池田は声が良いし、村上は表情が良い。タバコを吸った後のあの渋そうな顔!とにかくどこを切り取っても完成度の高い、味わい深いネタでした。

客ウケ自体は、それほどよくなかったですね。トップバッターとしての難しさもありましたし、僕がしずるの二人と一緒に笑い転げたWhy can't we be friendsは無風でした。強ボケの流れ弾に至っては、悲鳴が上がってしまいました。それでも僕は、今回のしずるは優勝クラスのネタを仕上げて持ってきたんだな、しずるってこんなに面白いんだな、と思いました。単独ライブに行ってみたいです。しずる、すげえ。

 

ラブレターズ「野球拳」424点

まさかの歌ネタ。フォーマットは彼らの代表作「西岡中学校」とほぼ同じで、①シチュエーションの提示②意外な導入③笑いどころと繰り返されるフレーズの提示④ストーリー性のある歌詞⑤一瞬別方向のボケを挟む⑥繰り返されるフレーズに戻る⑦シチュエーションの再提示、という型。ボケ数は非常に少なく、爆笑するというよりは雰囲気込みでニヤニヤしながら見るタイプのコントですね。過去のキングオブコントで言えば、2700の「右ひじ左ひじ交互に見て」に近い。同程度の中毒性もあります。

このネタ、個人的にはすごく好きですし、溜口のキレのある動き、歌唱力なども中毒性があるのですが、このコントが地上波で大爆笑を取るにはハードルが二つあったようです。

まず一つ目。「スリーバント失敗でアウトになる」というルールが浸透しきっていないこと。いや、もっと正確に言えば、「スリーバントでアウトになることが死ぬほどダサい」という価値観が浸透しきっていないこと。

僕は野球部だったので痛いほど分かるのですが、スリーバントって本当にダサいんですよ。犠牲バントという、もともと大して格好良くない行為をしようとしているのに、それでも失敗する、っていうのがスリーバントなんです。ダサいんです。

さらにネタ後半では、スリーバントを恐れて見逃し三振までしている。これはもう本当にダサいにダサいを重ね着してる形なんです。そのダサさが伝わりきらなかったのかなと。野球部の価値観というハードル。

次に二つ目。ラブレターズの普段のネタが盛大な前フリになっているということ。彼らは普段、かもめんたるに匹敵する狂気コントをやっています。そんな文脈もあって、「お前ら何してんねん」から来る笑いが予選では発生したんだと思います。ラブレターズ自身の知名度というハードル。

ただ、最下位に終わったとは言え拍手笑いも来ていましたし、「西岡中学校」にもう一枚名刺が増えた形にはなったのではないでしょうか。彼らにとってはあまり損やダメージのない最下位だと思います。ある意味一番誰も傷つかないというか。

 

③ かもめんたる「念」444点

2013年、圧倒的なコントで優勝した王者が帰ってきました。より一層熟成した狂気と知性を携えて。

遠距離恋愛中の彼氏が念になって現れるという発想が全てのコント。絶妙に気持ち悪い動き、透けてる、のくだりで念であることを説明。まずこの手順が抜群に巧み。そのあと、笑う、本体の意識が朦朧とする、指示待ち状態、のくだりで念のシステムを明らかにしていく。そこからはしゃぐう大を見せて、念の動きのエスカレートに従って「お互いにとってマイナス」「これでは何も満たされない」「やっぱ会いたいよ」など、部分部分で彼女側がトオルにあまり良い感情を持ってないことが示されていく。これで関係が悪化して、念の側から別れを切り出して終わる、という流れ。

全体の構造としては、一見すると今回のKOCで目立った会話のないタイプのネタ。だけど実際的には、電話口から聞こえてくる本体の声をマキオが復唱するため、感情のやり取りが成立しています。他の会話のないネタと最も異なることは、この二人は「会話をしようとしている恋人同士」であるということ。届きそうで届かないコミュニケーションのもどかしさがベースになっているからこそ、ストーリーが駆動し、別れ話になるというオチに展開していくわけですね。

部分部分としては、基本的には「念」が何かしらモーションを取って、それに対するマキオの説明ツッコミで笑う形。かもめんたるの最大の武器、う大のワードはマキオが翻訳する形で「糸の切れた凧」の一か所のみ。もう少し欲しいと思いつつも、翻訳という形式上、何回もやると客が構えちゃうからダメなんでしょうね。

僕はめちゃくちゃ笑いましたが、客ウケは尻すぼみだったような。最後の方、別れ話になるあたりで、もしかしたら置いてけぼりを食らった人が多かったのかもしれません。長尺のバージョンだともっと丁寧にやるところなのだと思います。

今回のKOC全体を通してみても、このネタがウケ・傾向のわりに得点がそれなりに高かったのは、設定の独自性が評価されたから…ではなさそう。今回のかもめんたるが上位五組に残ったのは、むしろ、2013年のキングである手前、審査員としても目立った低得点をつけにくかったためではないでしょうか。何となくこれくらいか、という感じで88点前後が並んだのではないかと。勘繰りすぎでしょうか。

それにしても去年の「地獄の元カレ」といい、かもめんたるは恋愛にまつわるディスコミュニケーション型のコントでKOCに行きたかったんですね。そこには何かしら、作り手側の意図がありそうな気もします。

 

④ かまいたち「監禁」458点

実力は高く、業界にもお笑いファンにも愛されていたものの全国賞レース出場経験なしだったかまいたちが、とうとうKOCの舞台に登場。監禁された山内が、濱家に延々と首の落ちるマジックを見せ続けられる、という不条理なコントで高得点をもぎとりました。そういえば、普段のかまいたちとはボケとツッコミが逆転していますね。

さて、今回のKOCには、「一つのアイディアを延々と見せ続けるコントが多かった」というような感想が多いようですが、このネタは少し毛色が違うというか、「一つの大喜利のお題に対して様々なアイディアで答える」というタイプのネタでした。分かりきっているオチに対して、様々にフリ、シチュエーションを転がしながら応答していく、という仕組み。ネタの中で披露されているアイディアは手数も多く、幅も広い。笑い飯・千鳥の漫才に通ずる関西イズムを感じました。酒飲んでゲラゲラ笑いながら、ああでもないこうでもないとボケをブレインストーミングしている様子が見えるような。単独ライブだと幕間VTRで没ボケ集とかやってそう。

また、今回のKOCでは「会話・掛け合いのないコントが多かった」のですが、このネタでは二人はコミュニケーションを取ろうとしているんですよね。山内は必死で話しかけるけれど、濱家からの応答はない、という形。二人はお互いの存在に気付いていますし、お互いに自分の言葉やふるまいを見せようとしています。直接の会話はありませんが、お互いの行為は発言が相手に向いているという意味では、掛け合いらしきものが存在するコントだと言えそうです。

会場ウケとしては、一番最初のツカミの部分で、首が落ちるマジックに笑いではなく悲鳴が出てしまい、なんだかふんわりとしたスタートになったことが残念かなと。それ以降はちゃんとウケを取り戻していましたが。準決勝では出だしが爆発したでしょうから残念です。

ところで、あのマジックのツカミで悲鳴が起こったということは、観客はこのマジックを見たことがなかったか、舞台の中のことと舞台の外のことを区別できない人たちだったのでしょう。このネタの根幹は、監禁というシリアスなシチュエーションの中に、首が落ちるベタベタなマジックが繰り返されるしょうもなさにあるはずなのに、観客はこのマジックを「しょうもない」と思わず、悲鳴を上げた。ちょっと残念。

ただ、それでもウケが回復していったのは、山内がマジックの動きのしょうもなさについて的確な言及をしていって、ネタの見方を観客に学習させたからでしょう。かもめんたるもそうですけど、ツカミでついて来れなかった人に対してのキャッチアップが綿密なところに器用さが出ているなあ。

緻密で正確、減点要素のないネタ運びをするかまいたちがこの位置にいたことが、後のアイディア勝負のコント師たちの点数に影響を思いっきり与えましたね。

 

⑤ななまがり「焼きつく」430点

キングオブコントには例年、「キリンスマッシュ枠」とでもいうべき枠があります。根幹はベタな笑いに根差しているのだけど、斬新な笑いの取り方を提示する、パフォーマンス的なコント。過去にもたくさん名作が披露され、高い評価を得てきました。2700のキリンスマッシュ、天竺鼠の寿司、バンビーノのダンシングフィッソン族、藤崎マーケットのMr.MASA。今年の「キリンスマッシュ枠」は、確実にななまがりでしたね。

中身としては、「ナス持ち上げる時だけ左利きだよ」とひたすら繰り返す外国人に遭遇した男が、仕事中ひたすらそれが頭から離れなくなる、というもの。本当にどうやって思いつくのでしょう。これは渾身の一撃でしたね。ウケもよかったですし、とても面白かったです。

お笑いのネタを二つに分ける方法として、「あるあるネタ」と「ないないネタ」という分け方があります。前者は生活世界に有り触れているものを描写して、共感を誘う笑いの取り方であり、中川家友近藤崎マーケットらが得意としているもの。後者は生活世界のどこか一部をズラすことによって、共感されない状況を作る笑いの取り方であり、ジャルジャルやロッチ、さらば青春の光らが得意としているもの。

このネタはその分類で行くと、あるあるネタになります。それも思いっきり高度な、新時代のあるあるネタです。普通、あるあるネタというと「駅員さんが言いそうなこと」だとか「学校でよくあること」「お母さんが言いそうなこと」みたいに、自分の外側にあるものを抽出して共感を作ります。

しかし、このネタの「あるある」のポイントは、「変なフレーズを耳にすると、そのことが頭から焼き付いて離れなくなる」「いつの間にか焼き付いたものが他のものと混ざる」という、自分の内側にある「あるある」です。脳の中の出来事、人間の認知機能の出来事をコントとして成立させた、という点で物凄い発想力だと思います。

得点につながらなかったのは、順番が悪かったといえるでしょう。同じタイプのコントであり、かつ見せ方の多彩さで勝負するかまいたちの後では分が悪かったです。また、僕が見たことのあるバージョンに比べるとオチが改悪されていたようにも思います。「頭から焼き付いて離れない」という脳内あるあるに徹するならば、オチで新しい人物を出すよりは、「ネギにまたがっても飛べないよ」でスカして終わるバージョンの方がベターな気がします。審査コメントでは「あとひとまがり」とありましたが、むしろ曲げずに透徹したあるあるネタで終わった方がコンセプトに沿っていたような気がします。

もっともどうイジったところで、掛け合い重視の今大会にあっては不利だったことも否めないでしょう。このネタには掛け合いが存在しないばかりか、厳密な意味では初瀬のピンネタみたいなもので、森下の素性は一切掘り下げられないわけですからね。掛け合うことにも、掛け合わないことにも一つの美学があるでしょうから、それは採点の際の「虫の居所」みたいなものと理解するしかありませんね。

いずれにせよ、従来の準決勝敗退芸人の審査であれば、圧倒的な点数でここが1位か2位に入っていたことと思います。930点くらいついたんじゃないかな。それくらいすごいネタです。視聴者にも印象は残せたでしょうし顔見世は十分でしょうから、来年も度肝を抜く発想のネタを期待しましょう。ハマればいつでも優勝しそうなコンビです。

 

ジャングルポケット「トイレ」466点

昨年は噛み合わない会話をベースにした不条理なコントを披露していたジャングルポケットが、がらりと方向を変えてドタバタコント路線で決勝に帰ってきました。この路線は斎藤のリアクション芸を活かすという意味で非常に有効で、バチっとハマっていましたね。昨年の「三角関係」のようなマイナー調の設定よりも、「誕生日のサプライズでトイレ中の上司にケーキを贈る」というC調の設定の方が、確かにジャンポケに似合ってます。色々考えて原点回帰したような感じがします。

かまいたちならそれ一本で4分のコントにするんじゃないか、という強いボケ「トイレの扉を開けっ放しにする」「トイレで非常識な振る舞いをする」「トイレでめっちゃ喧嘩する」などを複数散りばめ、フレーズを天丼していきながら、これでもかこれでもかとストーリーを展開させていく。最終的には、これまでのボケのすべての要素に説明をつけ、話が繋がってオチ、というコントでした。

それにしても、シチュエーションとしてのトイレは完全にハマってましたね。なるほど、トイレだと斎藤は動けないので、他の人たちのアクションに対してずっとリアクションし続けるしかないわけだ。斎藤を固定することで、太田の不条理な行動や、おたけのダンスが映えるわけですし、あれだけボケを詰め込んでも絵面のシンプルさを保てたのでしょう。

ただ、個人的には他のコンビと比べてセットありきのボケが多く、そのトイレセットを準備できる環境にあるならキングオブコント獲らなくても良くないか、と思ってしまう部分もありました。ウォシュレットのくだりとか、セルカ棒のくだりとか、本編と直接関係のないスタジオコント的なモノボケがちょっと後半目立ったような。別にモノボケがダメだとは思わないのですが、売れてる人たちのやり方だなあと。

また、展開の詰め込み方についても、「展開がたくさんあって飽きない」という一方で、一つ一つの展開がもっと面白くなりそうなところで話が切り替わってしまって、先先行かれ過ぎるというか。かつてのM1の手数が正義だった時代に通ずるようなものを感じました。

その一方で、ジャンポケが勝つ作戦としては大正解だなあとも思いました。ジャンポケは演技力が抜群に高いトリオですが、憑依芸をするわけではありません。斎藤は斎藤、太田は太田、おたけはおたけのまま舞台にあがります。そのため、会話劇ベースで推したり、キャラクターを掘り下げようとしたりすると、絶対にどこかで「一本目と二本目同じじゃん」というところに辿り着いてしまう。だからこそ、コントの中のストーリーの展開だとか、シチュエーションだとか、セットにあるモノだとか、キャラクターの外部のものにどんどん笑いのきっかけを求めていくのは理にかなっているなあと。

得点としてはここまでで一番の最高得点。旧キングオブコントだとジャンポケとしずるが入れ替わったのかなあ、なんて思いながら見ていました。

 

⑦だーりんず「結婚式前日」431点

芝居がかったコントを得意とするおじさん二人組。何度かKOC準決勝に進出している日陰の実力派です。僕が見たことあるネタだと、「実の父親に復讐しに行く息子」や「再婚相手を身内から選ぼうとする男」や「親父の寿命が短いらしい」など、何かしら家庭の問題を含んだ泥臭いシチュエーションを設定して、その中でストーリーを展開し、きっちり物語が完結して終わる、というタイプのコントが多い印象。今回のネタもそういった流れに乗っかったネタでしたね。

息子の結婚式前日に、父親が「お前は本当の息子じゃない」と打ち明ける。そんな父の告白に対して、しかし息子の食いつくポイントは「父子の関係性」ではなく「父親が童貞かどうか」だった、という認識のすれ違いが根幹にあるコント。

しかし、あまりにも強すぎる「童貞」というワードに引っ張られて、ネタの根本である認識のすれ違いの部分が受け入れられなかった形に。このネタの笑いどころは「親父が童貞だ」ではなくて「親父が童貞であることが気になり続ける息子」なんですよね。息子につられる形で、親父も童貞であることが気になり始めるところの情けなさなんかは、実にたまらないものがありました。オチの「立派に育ってる」も当然「息子」のダブルミーニングで、シリアスな芝居調なのに中身はひたすらおじさんの悪ふざけ、というコントなわけです。

このコント、確かにめちゃくちゃ面白かったですし、クオリティとしては決勝に上がるのも納得いきます。「童貞」というワードに頼ったコントではなくて、両者の関係性や心情まで見えるしっかりした芝居が根底にある、骨太なコントです。

ただ、キングオブコントがテレビの番組であることを考えると、上げるべきではなかっただろう、と思います。だーりんずの実力ならば、もっと他に上がるタイミングもあるんじゃないかなあと。

結局、会場客に受けないこともあって、父親が自ら童貞であることをカミングアウトするあたりからは、最大の武器である演技もペースが乱れてしまっていました。かなりの密度で味のあるフレーズがポンポン出てくるのですが、それらも間がおかしくなったり、ちょっと舌が回っていなかったりしてウケず。

「童貞はいかなるときも童貞」「俺の中の思い出の父さんは全部童貞」「初体験のないまま初孫」「明日は俺の結婚式、今日は父さんの卒業式」「探すよ、夜中中やってるお店探す、あの時の父さんみたいにさ」「母さん、立派に育ってるで」などなど。この辺全部予選では大爆発したんだろうなあと。

囲碁将棋の肛門タオルもそうでしたが、本ネタの入り口が下ネタになっているというだけで、その後にある緻密な面白さが全てハマらない形になってしまうのは、テレビと劇場の大きな違いなのでしょうね。なまじっか中身が高度なぶん、その良さが伝わりにくくなってしまうのもあるのでしょう。しばらくYouTubeコメントやツイッターでは酷評されるでしょうが、また決勝で見たいです。「童貞や!」のタイミングで、女性客の悲鳴に隠れて明らかに松本さんと分かる笑い声が響いていましたよ。

 

タイムマシーン3号「カツアゲ」445点

M1グランプリ4位の実績を引っ提げて最近ノリにノっている漫才師、タイムマシーン3号がコントの舞台へ。コントの持ちネタは、僕も2010年KOC準決勝で披露したエレベーターと、よくネタ番組でやっている演劇の練習しか知りません。前者は面白いけど固有名詞のボケが多いので賞レース向きではなく、後者はニッチェのお遊戯会と被っているし明らかに賞レースにはユルすぎる。どんなネタで来るんだろう、と思ったら有吉の壁のアレを4分尺にしてきたわけですね!

弱そうなやつをカツアゲしたところ、そいつは体からひたすらお金が出てくる化け物だった、その発想一本のコントです。「初詣」「打ち出の小づち」などのワードを使って設定の補強をしつつ、様々な見せ方で小銭が出てくる様子を並列し、大道芸・警察など第三者の目線をいれつつ、最終的にオカルト展開へ、という流れとしては無駄のない形。

関の側から手品クイズの形で積極的に小銭を見せる場面があるからこそ、体がかゆいだとか、咳をするだとか、小銭を食べるだとか、一般的な生理現象で小銭が出てくる絵の異常性が引き立っていました。客ウケしたのは前者で、後者は悲鳴が上がっていましたが、本来の狙いは前者をフリにした後者だったんじゃないかとも思います。

随所では明らかなアラも。ツッコミのフレーズの「家族になんて言えばいい」とかはジャルジャルと丸被りなので入れない方がよさそう、とか、「おっかねー!」のツッコミはお金・おっかないがカブって聞こえるので、入れるとしたら最後の方がよくないか?とか、一番最後のデカい小銭に対するツッコミは「古い」よりも「でかい」の方が適切なんじゃないか、とか、というか古いお金で落としたいなら小判は出すべきじゃないのでは、とか、ツッコミが状況から離れた例えをし過ぎていて漫才っぽすぎる、とか。

それでもウケ切ったのは、何といっても絵面の強さと発想の強さでしょう。どちらかというと丁寧で器用だけどアラのなさ、アクのなさゆえ、一般ウケするけど賞レースでは勝ち切れないタイプの芸人だと思っていただけに、丸っきり印象と逆のコントでした。めちゃくちゃ面白かったです。掛け合いが重視された今大会でしたが、ここに関しては漫才風の掛け合いに頼らず、ストイックに絵で勝負したのが功奏したんじゃないかと思います。

 

ジグザグジギー「達人」433点

フリVTRの「デスダンス」が何より面白すぎる。2013年に決勝進出した際には、本来の芸風からはやや外れたネタを2本揃えて勝負に出た結果、下位に甘んじてしまったジグザグジギー。あれはあれで獲りに行くための賭けだったのでしょう。本来は「出席」「席替え」「なめとこ」など名作も多い実力派コント師で、雰囲気にハマれば優勝もありえる実力・実績があります。

さて、今回のコント。設定としては、達人がハエを箸で捕まえた後すぐに白飯を食べる、というもの。展開としては、強い絵面をひたすら繰り返していき、システマチックな展開に移行し、システムに支配された宮澤からは人間味が失われ、狂気が露わになっていく、という感じ。細部の笑いどころとしては、宮澤の絵の強さと、池田の実況ツッコミが高密度に詰め込まれた形。いかにもジグザグジギーといったネタでしたね。

客ウケとしては、最初のボケで拍手笑いが2回来ていましたし、波に乗れそうな予感もあったんですが、結果的には失速気味になってしまいました。

今回は、彼らは出番順に泣かされた形になったのだと思います。コントの根幹である「絵の強さ」「しつこさ」「狂気展開」のどれもが、前の出番のタイムマシーン3号と被ってしまいましたし、特に「絵の強さ」において負けてしまう形となったように思います。天丼型のコントが出尽くしてしまったあとの出番順だったことも影響したといえるでしょう。もう少し早い出番なら変わっていたかもしれません。

それにしても、池田のツッコミは今一つ決勝だとハマりきらないような印象を受けます。間違いなくこの世代のコント師ではトップクラスのツッコミだと思いますし、予選会場ではガンガンにウケているはずなのですが。

僕が思うに、池田のツッコミの面白さは、宮澤の行為に没入し過ぎず、少し引き気味に体言止め・省略の多いフレーズを置き、観客に想像させる余地を残すところです。

今回のネタで言うと、「カニのように(なった)」「愉快な化け物に(なってしまった)」などはいかにも池田な省略型ツッコミです。さらに、「全然おかず食べない(白飯は食べるのに)」「店員さん、衛生面大丈夫ですかね?(達人はさておき)」「ライスのお替りの用意を(達人の白飯が減っているので)」あたりも、文脈を踏まえつつ笑いどころをズラすツッコミも想像の余地のあるタイプのツッコミ。このあたりは、スタジオの笑い声と僕の笑い声の量にズレがあったポイントでした。

確かに、よくある観客の気持ちを代弁するタイプのツッコミではないし、バイきんぐ小峠のような強烈な言い方があるわけでもないし、銀シャリ橋本のような例えがあるわけでもない。凄くわかりやすいツッコミではないと思います。ストーリーの中の登場人物として、色んなところが気になりつつ、ボソっと実況するような味のあるツッコミ。

ただ、特別分かりにくいツッコミなわけではありません。たくさんの人に親しまれる可能性のある、普遍性のあるコント師であることは、過去の名作が証明しています。露出が増えて、「ジグザグジギーのコントの見方」がもっと広まった時には、KOCでも台風の目になれるのではないかと。

Taiki Obonai 2014-