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僕が本当に面白いと思うこと

6月3日に京都で一人コントライブします。よかったらどうぞ。

「笑けずり」感想②それぞれのオリジナリティ ~クセが凄い!~

前回書いた以下の記事の続きになります。 

***

「笑けずり」に参加した9組の個性あふれる芸人たちについて、それぞれ少しずつコメントを書いておこうと思います。順番は、削られた順番で。

①いらんいらん

大阪から来た昭和レトロな二人組。最初のネタ見せでは、芸人仲間の審査であるにも関わらずNHKに媚びる形のネタをし、結果的にそれが作戦ミスで削られることに。随所で笑かそうとする根性を垣間見ることはできましたが、残念な結果となりました。

僕は、第一回のネタ見せでいらんいらんが削られた理由は、ネタ中の「ネタなんかできへん」みたいな自己言及の台詞のせいもあるのではないか、と思います。ああいうメタなセリフがあると、見ている側は「そういう漫才なんだな」と認識してしまいますよね。その結果として、「漫才をしていない」「ネタをしていない」というような評価に繋がったのではないでしょうか。

一方で、第一回の放送の平場ではかなりアピールできていたように思います。元気よく場を盛り上げる様子、小道具を仕込んできたあたりには芸人魂も感じました。が、明るくて楽しい芸風とは裏腹に、ネタ見せの直前には焦りで固まっている様子も見られました。

千鳥大悟の「ダウンタウンさんとか見なかったの?」や、千鳥ノブの「お笑いの世代がごっそり抜けている」といったコメントが的確に表すような、超オールドファッション。笑けずりには「要らん要らん」と評されてしまいましたが、個人的にはネタよりもロケで見てみたいなあ、と思いました。大阪の商店街で食べ歩きしてほしいです。

 

天然ピエロ

笑けずりに二組残った女性漫才師のうちの一組。キャバ嬢をしていて見た目のすっきりした羽柴と、何となく暗そうで不穏な佐藤の二人組。羽柴はキャラクターがはっきりしていて、ネタ中も平場も同じような感じ。普通のことを言った方が面白い人なのか、平場では一言一言に爆発力があるのに、ネタの中でネタっぽく笑かす台詞ではあまりハマらず、中川家の回で削られることになりました。

とはいえ、いらんいらん同様に、羽柴の平場の強さは際立っていました。よく喋る喋る。中川家が評していたように、大阪弁が綺麗。とてもいいキャラクター、魅力をもった芸人だなあと思いました。

ネタで苦戦したのも、単にキャラクターの面白さをネタに落とし込めていないというだけのことでしょう。今後どんどん面白くなりうると思います。同系統のコンビでは尼神インターがぱっと浮かびますが、尼神の誠子ちゃんよりも天然ピエロの羽柴の方がウザ可愛いのは強み。

バラエティ番組として成立させるためには、もしかしたら天然ピエロは残った方が良かったのかも。ネタで生きていく人、って感じではないですから、笑けずりのシステムとは相性が悪いのですが。

(そう考えたら、笑けずりでは、純粋にネタで勝負する芸人が残って行き、キャラクターが強い人たちが消えて行った、という見方もできるのかもしれません。明るく楽しい人たちが消えていくことが、番組がピリピリと緊張していく流れを作っていたのかも。)

 

アルドルフ

番組の中ではヒールに近い役割だったイケメンコンビ。傲慢な発言や態度は、視聴者の反感を十分に買ったことでしょう。編集の方向性としても、どう考えても対立項にあったブサイク・非リアコンビのダイキリの方に共感しやすい作りになっていましたし。番組の流れとしては、噛ませ犬的ポジションで終わってしまった感のあるアルドルフ

とはいえ、ティムタムのネタ、面白かったなあ。ダイアンがやってた「○○を知らない」シリーズに近い構造のネタですが、かなり面白かった。イケメン漫才師、女性人気だ、なんて言われてますけど、ネタでも勝負できる人たちだなあと思いました。

もちろん華があることは物凄く大きな武器なのだと思います。女子大生と付き合いたいネタなんて、ダイキリやザ・パーフェクトがやったら全然違うテイストになるでしょうし。ゲスかっこいい、みたいな方向でまとめられるのは彼ら、というか小野のキャラクターあってのことだと思います。

予断ですが、アルドルフのイケメンっぷりは最近のイケメンって感じですよね。塩顔、薄め、色白、細身と、昨今のイケメンっぽさを体現しています。系統でいえばパンサー向井に近い、可愛げあるルックス。草食系男子の延長にあるイケメン像ですよね。うーむ羨ましい。

 

ダイキリ

非リア漫才、根暗漫才とでもいいましょうか、不幸のオーラ漂うダイキリ。ネタの力だけでいえば、最終三組に劣っていなかったのではないでしょうか。無限大でトップクラスにいる実力は十分うかがい知ることが出来ました。番組の流れ次第では、かなり良い所まで勝ち残っていたのではないでしょうか。

特にツカミの回なんて、何もネタをいじくる必要が無かったくらいだったわけで。元からある程度仕上がっていた、ともいえます。

敗退した回のネタも、「ペットに扇風機を飼う」というぶっ飛んだ設定は非常に好感が持てました。僕ああいうの大好きなんです。もちろん、地獄の大滑りツッコミフレーズ、「せん!ぷう!き!ぶぅぁばごーん!」も飛び出してしまったのですが。ノブの言う通り、十字架を背負いましたね。

そういえばツッコミは関東出身と言うプロフィールなのですが関西弁なのですね。オジンオズボーン高松と同じパターンなんでしょうか。南部の非リアっぷりを際立てるオリジナリティのあるツッコミ、早く開発してほしいものです。

 

こゝろ

元番長と元ヤンキーのパシリが組んだ、上下関係のある不良芸人、こゝろ。芸歴は最も短いコンビだったのですが、笑けずりにおいては主役といってもいいくらいの活躍をしていました。この番組のキモは、視聴者が芸人の成長をいかに感じ取り、その物語に飲み込まれて行くか、なのですが、こゝろは最も顕著に成長していったコンビでした。

何と言っても、芸歴が短く、二人とも若いことがプラスに働いたのか、教えられたことをきちんと受け入れ、使いこなしていく素直さがあったのです。そこに視聴者の多くが胸を打たれたのではないでしょうか。二人がぶつかり合いながら、迷いながら、、荒木の明るいキャラクター、一発ギャグの連打と、山出谷のチンピラ風ツッコミの漫才を完成させていく様は、この番組の一番の見どころだったのではないかと思います。

特に、山出谷に強くツッコまれたあとの返しとして「怒ってる?」を発明したのは素晴らしいセンス。二人のキャラクター、関係性を強調しつつ、しっかり笑いもとれるわけですからね。そして、その「怒ってる?」を存分に生かすために、同じコント漫才を3回やり、つっこみアリ→つっこみナシ→キレる という流れを作った千鳥回のネタ、あれはもう最高に面白かったです。

ああいう、序盤にやったことを違う角度からやり直すネタっていうのは、近いところだとウーマンラッシュアワーオジンオズボーンTHE MANZAIでやっていますし、M-1では麒麟もやっているのですが、それらに近付ける可能性を感じました。特に、「釣りいらんな」をあそこで挟み込めるのは超面白い。自分たちがどう見られているかが分かってるコンビなんだなあと思います。

これから舞台数を経験していって、芸歴をきちんと積み重ね、試行錯誤していけば、きっと今のスタイルの延長上にある笑いに辿り着けるのだと思います。いやあ、良いコンビだ。

 

オレンジサンセット

もともとこのメンバーの中では名前が売れている方のオレンジサンセット。そういえばM-1甲子園っていう大会で優勝してたんだっけか。シュールで独自色の強い設定を武器とするコンビですが、そこまで飛び過ぎないのでついていきやすい、親しみやすい漫才をします。

とはいえ、このメンバーだとあまりにも正統派過ぎて埋もれてしまった感もありました。誰からも推されない芸人、となってしまったのも致し方ないように思います。結局最終三組に残れなかったことも、インパクトの面で負けてしまったせいもあるのでしょう。

もともと選考会を一位通過しているコンビであり、実力は確か。体を街に見立てるネタなんてめちゃくちゃ面白いですもの。ネタ作りで苦労しているような部分も特になく、非凡かつスピーディな発想力を感じました。

今後も面白いネタを量産していって、今までに見たことない漫才を続けてくれるコンビだと思います。M-1の準決勝くらいにふらっと顔を出しても何も驚かないコンビです。いつか賞レースの決勝で見たい。

 

⑦ぺこぱ

笑けずり屈指のキャラコンビ、ぺこぱ。松陰寺のキザキャラを前面に押し出したコンビなのですが、キャラもので終わらないネタの強度があったことが、最終三組に残った要因でした。特に、「健康な奴を手術する」という設定の漫才、あれは面白かったなあ。

松陰寺のキザキャラそのものは、かなり作り込みが甘く、本人の迷いもかなり透けて見えるのですが、かえってそれが笑いに繋がるというスギちゃんタイプ。ネタを二回やったら疲れてキレが悪くなる、なんて聞いたことねえよ。

そしてキャラものに終わらない、松陰寺の書くネタのナンセンスさも武器だったのではないでしょうか。ツッコミにキスをする、キザが細胞分裂する、などなど、随所にナンセンスなフレーズや展開を織り交ぜることで、ネタに強度が出ていたように思います。

もちろん、番組内で指摘されていたように、ツッコミが弱い部分があったり、ボケとツッコミのテンションが噛み合っていない部分があったり、あるいは松陰寺のナンセンスなネタは、ナンセンス過ぎて伝わり切らない部分があったりと、かなりムラのあるコンビであることは間違いないのですが、そういうところも含めて、魅力のあるコンビだなあと思いました。

最初はイロモノ漫才だろうから、すぐ消えるんだろうな、と多くの視聴者が思ったことでしょう。しかし、最終三組に残り、視聴者の多くに愛されるに至ったのは、やはり松陰寺の何とも言えない、哀愁すら漂うキャラクターあってのことです。オードリーや髭男爵以降、キャラ漫才はかなり広く演じられるようになり、一つの漫才のカテゴリともなっています。今後は今のキャラ漫才をどんどん仕上げ、完成度を上げていく方向に向かうのか、それとも荒削りなままパワーで押し切るのか。松陰寺がどんどんピン芸人化していくのか、コンビ芸にこだわるのか。色々な方向性があるように思います。

 

⑧Aマッソ

笑けずりに数少ない女性コンビの一つであり、笑い飯に憧れて漫才を始めたというAマッソ。ネタの作りやボケのナンセンスさは笑い飯以上に攻めたものとなっています。私たちはこれが面白いんだ、という強い意志を感じます。生放送では、加納のアナウンサーとの絡みがもう攻め過ぎてようわからん感じになっていましたが。かなり個性のある漫才をするコンビです。

なんといっても、従来の女性コンビの枠に収まろうとしない意気をまず買いたい。女性コンビの漫才といえば、彼氏がどうだ、結婚がどうだ、子どもがどうだ、おしゃれがどうだ、基本的に女性目線のネタになりがちなのです。それゆえ、なんだか食傷気味になってしまうところがあり、女性の漫才はさほど成果を上げる事も、発展を遂げることもないまま、M-1の10年、漫才が色々な方向に進展していった10年を終えてしまった感があります。

Aマッソは、そんなM-1以降の世代として、女性による、本当に面白い漫才の担い手として、まさに相応しい能力と才能を持ったコンビです。強いワード、独特のシステム、ボケとツッコミの流動性、誰とも被らないシステム、アホすぎる展開など、どこをとっても見たことのない漫才。笑い飯の延長上には確かにありますが、笑い飯ともまた違う、とても面白い漫才をするコンビです。

ただ、これは今のままだと万人受けはしないんだろうなあ、というのは笑けずりを見ていて随所で感じました。いかんせんネタの運びが独特であるために、最初にツカミ切れない、ネタを理解してもらえないと、ずっとネタが流れて行ってしまう欠点があるのです。最終決戦でザ・パーフェクトに敗れたのも、「スタンプラリーで起こりうること」という独特過ぎる設定のもと、自由奔放にボケ過ぎた、ということが理由としてあるでしょう。もちろん、それが面白いのだ、と考えるAマッソの哲学は十分に理解できますし、僕もかなり笑いましたが。

今後、どういう方向へと、二人は進化していくのでしょう。より分かりやすい漫才になっていくのか、今の芸風のまま貫いていくのか。今のままでいてありつつ、きちんと面白さをネタの中で説明できるコンビになれば、一気に天下を取れるコンビなのでしょうが、果たしてそれは可能なのか。うーん、早く地上波で見たいコンビです。

 

⑨ザ・パーフェクト

ハライチ、ウエストランド、三四郎など、ツッコミに比重の多い漫才が登場し始めたのは、2008~2012あたりのことでしょうか。その延長上のスタイルにあるのが、このザ・パーフェクトです。ハードパンチャー妹尾の繰り出す意味不明なボケの数々について、ピンボケ太朗が独特のワードセンス、間、発声でキョドりながら説明ツッコミを入れていくスタイルです。なんだかちょっとコントっぽさも感じます。

いやあ、ここはもう、笑けずりの中では群を抜いて芸風が出来上がっているコンビでした。最初の段階から、この漫才の形は出来上がっていましたし、個性もあり、完成度も備わっていました。個々のボケの破壊力もあり、笑けずりメンバーの中では最も地上に近い芸人であろう、という意味でも、優勝も納得です。

最終決戦の1ネタ目で披露した海カフェの漫才コント、ボケが客席に背を向けて料理をし出す件は圧巻の一言。動きボケを一切客に見せず、ツッコミの説明だけで笑いを取り切るなんて強引な手法、今まで見たことありません。あれが出た瞬間に、ああ、この番組の一番はこの人たちだ、と僕は確信しました。

「見えてないでしょうけど、今けっこう指切っちゃってます」
「見えてないでしょうけど、今カタツムリを作っています」
「ああ、カタがツムリを食べています」

この3フレーズが、笑けずり最終回の一番の爆発どころだったのではないでしょうか。いやあ、クソ面白いです。とっとと売れて、この番組ごとメジャーになってください。笑けずり発の全国区芸人になる、それがザ・パーフェクトの義務であり責任なのでしょうから。

Taiki Obonai 2014-