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僕が本当に面白いと思うこと

6月3日に京都で一人コントライブします。よかったらどうぞ。

R-1グランプリ2015感想文(Cブロック、ヒューマン中村まで)

今回のR-1は、ここ数年で考えてもかなりいい大会だったと思います。じゅんいちダビットソンの貫録勝ちに終わりましたが、シュール・発想枠のマツモトクラブ、ディティール・あるある枠のゆりやんレトリィバァの発掘にこぎつけたわけですからね。例年やや低調になりがちな大会ですが、当たり年といっていいでしょう。

去年のR-1はBKBにしてもやまもとまさみにしてもRGにしても、スタイルで笑わせるネタが多くて、ややネタが入ってこないような感じがあったのですが、今年の大会はフレーズの大会でしたね。決勝進出三人は、どれも強いフレーズと、そのフレーズの見せ方を持っている芸風でしたし、惜しくも予選敗退となった出場者も、山場となるようなフレーズを全員が用意しているように思いました。

逆に、スタイルで笑わせるタイプのとにかく明るい安村は不遇でしたね。ウケや前評判は抜群だったのですが、ちょっと今回の大会の雰囲気に合わなかった形になりました。

さて、各ネタごとの感想に移ります。

***

◎ Aブロック

○ ゆりやんレトリィバァ「受賞スピーチ」
海外の大物女優が賞を取り、その感極まった状態でスピーチをする、という漫談スタイル。女優としての英語でのスピーチの合間に、関西弁で毒のある「街でよく見る突っ込みどころのある人」のあるあるが挟み込まれていく。今回、ここが一組目かつ評価されて勝ち抜けたことで、大会自体が言葉の大会になっていった感がある。あるある自体のクオリティは、正直2chまとめサイトの秀逸な記事レベルといったくらいなのだが、なんといっても見せ方がうまかった。笑いどころがわかりやすく、笑い待ちをつくれる、というのはスタイルの良さだろう。

● あばれる君「カンチョー対決」
比較的有名なネタをかけてきた。ここはもう、雰囲気でどれだけ引き込めるかが勝負なのだけれど、ちょっとネタの設定と本人の役柄の見た目に無理がありすぎたか、あるいは芸風がバレすぎていたか…。序盤は低調な滑り出しとなってしまい、後半に仕掛けてある爆発ワードがいまひとつハマりきらなかった感はある。バカバカしさ押しのネタなのだが、いまひとつ引き込むだけの説得力を持てなかったか。「自決」「保健室で会おう」あたりは相当いいフレーズだと思うのだが。

● とにかく明るい安村「全裸に見えるポーズ」
ここは正直横綱相撲で勝ち上がるとばかり思っていた。確かに決勝でもウケてはいたし、何か出来が悪いといった感じはしなかったが、ワードの強さのあった前二組と比較すると、確かに勢い芸に見えてしまって、評価しづらいところもあったのだろう。個人的には、アームストロング時代から実力は大いに評価しているし、このネタもなんならR-1の歴史に残るレベルの神ネタだと思っているのだけれど、勝ち抜けには至らず。

● COWCOW善し「テトリス
敗者復活で上がってきたのはR-1決勝常連の山田よし。持ちネタは多数あるわけで、どのような攻め方をしてくるかと思ったら、まさかの決勝で陣内直系の映像一人コント。この手のネタは、やはり陣内を超えられるかというところに一つのハードルがある。そして、そこを超えるだけの説得力はなかった。ネタとしても、ルールを説明するところで終わってしまっているような感じで、例えばバカリズムとかなだぎ武が過去にR-1で見せたような無茶苦茶さ、どこに帰着するかわからないようなワクワク感がなかった。

<ブロック審査>
ワードの強みでゆりやんレトリィバァが決勝進出。僕ならば安村に入れたいところなのだけど、やはり評価されにくいネタだったのだろう。

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◎ Bブロック

● 厚切りジェイソン「漢字」
日本語の漢字の意味、用法、部首などに文句をつけていくネタ。うーん、ここは期待値が高すぎた感じもあったのだろうか。全力ストロングスタイルがちょっと空回りしたんじゃないかって感じに。スマートさを強調させた煽りVからネタに入るわけだから、下ネタの件が長かったのがちょっと拍子抜けだったのか、あるいはネタの演じ方として、ちょっと間が悪かったか、システムを丁寧に浸透させるやり取りが冗長だったのか…。今一つもう一つ、なウケ具合になってしまった。フリップではなくてボードでやるのは好感持てるポイント。決して斬新なネタっていうわけではないのに、既視感が出なかったことに一役買っていた印象。どのみち一本目で勝ち上がっても二本目があったとも思えないので、まあこれくらいでいいんだろうか…。

● エハラマサヒロ北斗晶漫談」
クオリティの高い北斗晶の物まねをベースに、色々な細かい物まねや歌ネタなどを織り交ぜて行く、一番得意なマルチ漫談スタイル。確かに面白いし笑いもよくとっているのだけど、ちょっとディティールに走り過ぎた、テクニック押しに走り過ぎた感が。「コストコ行って来い」の天丼も凄く面白いし、随所の小ネタも確かに面白いんだけど、ちょっと小粒になってしまったような。ここは何をやっても面白いことはもう世間にバレているわけで、ディティールの芸を突き破るメチャクチャさを提示しない限り、R-1では勝ちあがれなさそう。実力は見せつけたが、勝てる感じはしなかった、といったところ。

● アジアン馬場園「店員」
もともと漫才の畑の人だけはあり、話はかなり上手でよどみないし、嫌らしいあるあるも凄くピンポイントを突いている。序盤のレジで買い物の内容から晩飯を当てにかかるところは特にいやらしさが出ていて素晴らしい。鮭弁当でテンションが下がるところの崩しまで含めてテンポよく笑いを取りつつ、いい感じに世界観が浸透してきたようなところで、なぜ外に出たのか。ネタの前半と後半のつなぎ目が雑で、かなり丁寧に演じていて面白くなりそうだった前半から、なぜあんな展開にしたのか。完全にネタを二つやってるんですよね。こういう感じだと評価されにくいのはもちろん、ウケも散漫になるわけで。

○ マツモトクラブ「ストリートの客」
一人芸でありつつ、相手の姿を見せて行くタイプのネタ。去年のおぐのコントに近いが、見えない相手と会話していく流れがあり、二人でもそのままできるネタ、というのはR-1史上初では。確かに新しいスタイル。そしてネタも、設定の導入部分で一つ笑いを取れるうえに、曲が盛り上がるにつれて強いフレーズが入っていき、ハーモニカで一つのピークを迎えるという巧みな構成。その後曲調ごと急に落として、ハモる部分、太陽の天丼、真相が見えるオチ、と綺麗にまとまったネタ。予選から噂は聞いていたものの、芸風としてテレビ向きではないかなと思ったのだが、バチっとハマる格好に。コントとして作りが丁寧だったことが勝因でしょう。

<ブロック審査>
一番いい時の面白さが出せなかった厚切り、達者が過ぎたエハラ、ネタが弱かった馬場園、とくれば、そりゃ仕上がっていたマツモトクラブがあがるのでしょう。準決勝よりもフリが効いていていいネタに仕上がっていたように思いました。

***

◎ Cブロック

● NON STYLE石田「クリーム」
怪しげなクリーム販売員のプレゼンテーションネタ。フリップネタはR-1においてバカリズム中山功太と比較される宿命にあり、勝ち上がれないんだ、というのはずっと私が言ってきたことだったが、なるほどヒューマンが例年ハイクオリティのフリップネタをしていることで、そもそも笑いが出るというところにハードルがあるまでに来ているのね。ネタが前例に比べると弱いことに加えて、石田本人もかなり緊張して噛む箇所が多かったなど、ウケも厳しい感じに。石田本人もスベってるのを自覚しているような表情でなんとも。賞レースってこういうネタが毎回一組くらい出てしまうのだけど、まさか賞レース巧者の石田とは。「だから大会は面白い」(笑い飯・西田)というかなんというか。結果的に、マツモトクラブで最高に温まっていた客席を完全にさましてしまう形に。

● やまもとまさみ「ティラノ先生」
芸風としては去年と同じで、パントマイム風な動きボケ、顔芸、何故か無駄にカマっぽい喋り、ワンアイディアを貫徹するネタ作り。今回は去年よりもワンアイディアの部分に力点があり、「催眠術をかけられてティラノサウスの所作になってしまった先生」という設定を様々に料理して展開していく腕は確かに素晴らしい。随所で小柳ルミ子みたいなワードを挟むことができるのは、去年優勝できた理由(「盗んだ岩城」)でもあるんだよね。かなり出来上がっているネタだし面白かったのだけど、ちょっと設定でつかめなかったのと、ノンスタ石田のあおりを受けてしまう形に。割と本気で連覇がありそうだっただけに残念。

○ じゅんいちダビットソン「本田ショートコント」
サッカー日本代表本田に扮して、物まねしつつショートコントをするというネタ。いやあ、凄かったね。元々じゅんいちダビットソンの芸風っていうのは、ハードルを上げまくって、それを越えられないところに笑いが生じる、という芸なのだけど、このネタはまさしくそれの真骨頂。本田がショートコントをして、今一つ客席に伝わらず、何が面白いのかを自信満々に解説していく、というネタのシステムが斬新すぎる。さらに、ネタ運びも丁寧で、ルールを客席に浸透させ、だんだんに強いワードや崩しを入れていく賢さもあった。尻上がりにウケが増して行く形を、過剰なテンポアップやテンションアップすることなしに表現できるのはこの人の力量が凄いんだろう。とても良いネタです。

● ヒューマン中村「5・7・5」
5年連続決勝進出の孤高のフリップ職人が敗者復活。確かにネタは面白い。これはもうR-1視聴者の誰もが知っている。ネタは常によく練られているし、緩急も効いてる。今年は変化を加えて本人の妬み僻みを前面に出すというプラスアルファを追加したが、ちょっと客が引いてしまった形に。ああ、これは惜しい。作戦としては正解なのだけど、ちょっとやり過ぎだったか、うまいこといかない形に。これだけワードセンスも優れているし、風刺も効いたネタができる人なので、R-1みたいな賞レースで活躍する道以外にも生き残る術がありそうにも思うが、これからどうするのだろう。これだけ長いことR-1に出続けて、毎回一定のウケを取り、そして勝ち上がることは絶対にできない、という人もいないわけで…。

<ブロック審査>
全体的にウケ具合は低調となってしまったブロック。あとはもう、スタイルがどれだけ消費されていたか、というところでじゅんいちダビットソンに票が来た形に。やまもとまさみは審査委員票でいけばじゅんいちと並んでいるわけで、前チャンピオンとしての実力、高評価されているということはわかった。

 

Taiki Obonai 2014-