僕が本当に面白いと思うこと

社会学専攻の京大院生の諸々

THE MANZAI 2014感想

THE MANZAI2014を観たので感想です。

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◎大会最高顧問
ビートたけし

◎司会
岡村隆史ナインティナイン
矢部浩之ナインティナイン
高島彩
佐野瑞樹

◎審査員
西川きよし
志村けん
テリー伊藤
オール巨人
春風亭小朝
大竹まこと
渡辺正行
関根勤
・ヒロミ

◎ゲスト
指原莉乃HKT48
ビートきよし
テンダラー

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●各ネタ感想

Aブロック
①2丁拳銃『お金持ちになりたい』
金持ちになりたいという小堀。川谷が出す金持ちの具体例に対して、小堀は「生きてるん?」というボケを繰り返し続ける。それに対して、川谷は「ガッサー」という音と共に首が持って行かれる様を実演して説明していく。ルールを序盤で提示するいわゆるシステム系の漫才で、ツッコミが主な笑いどころとなっている、かなり最近の漫才。大ベテランのコンビでもこういうネタをやるのね。随所に裏切りを入れているとはいえ、「生きてる」「ガッサー」の二つのワードがネタの主軸。途中からは客席にも飽きが来た感じ、ワンアイディアで走り切るにはちょっときつかったか。途中で入る「エビでガッサー」のバトルのようなバカバカしい展開がもっと広がっていれば爆発もあり得たのだが、システムの提示だけで終わってしまった形に。それにしても、川谷さんのツッコミ、こんな味のあるしゃがれ声だったっけか。まだ会場も温まり切らず、なんだかフワフワした大会の始まりになってしまった。『夜中か!』

 

エレファントジョン『太ってきた』
太って来たという加藤。自分の近況を説明したい加藤に、ガッテン森枝がどんどん邪魔をしていくというスタイルは、当ブログで言うところの「プレゼンター固定型漫才」(過去記事見てね)に分類されるもの。このコンビは後半強いのが武器で、一発では意味が把握できないようなボケを2~3回連打して、徐々に浸透させていくという仕掛けがしてあります。普通の漫才師であれば、分かりにくいボケほど丁寧にツッコみ、分かりやすいボケはさらっと流す、というのが定石だけど、エレファントジョンの場合は分かりやすいボケは一発でツッコみ、分かりにくいボケ「TOTO」「いつか爆発すると思ってたんですよ」は何回も重ねる、という手法を使っている。縦横無尽にボケを重ねるネタ作りの雰囲気はナイツに近いのかな。こういう明るく楽しい漫才はTHE MANZAIでは評価されやすい傾向にある。とはいえ、全体として見れば一発一発のボケが浅すぎた感もあり、惜しくも決勝進出はならず。『いつか爆発すると思ってたんですよ』


③アキナ『野球部』
学生時代、野球部でキャプテンをやってみたかったという山名。秋山が「やめそうな部員の説得」というシチュエーションを提示し、山名がそれを受けコント入り。コント入りの手続き的部分で一切笑いが起きなかったため、ちょっと空気を掴み損ねた。序盤のボケは全体的に弱いもので、秋山のテンポもちょっと乱れ気味だったのだが、中後半は山名の大喜利ワードがどんどん当たって空気を掴んでいく。肩に手を当てる、の動きボケから会場にハマった形となり、5連休で大きな笑いを取った。途中でメタなツッコミ「俺誰やねん!」が入ったあたりで完全にノって来た感じか。うーん、とはいっても、良い時のアキナってもっと無駄がなく笑い取れるコンビだからなあ。調子としては決していいアキナではなかった。たけしはパンクブーブーに似てると言っていたが、僕はネタの回し方がNON STYLEに近いと思う。特にツッコミの話の運び方とかね。後半上げてきたことが好印象だったか。『ソフラン


④磁石『ラジオパーソナリティ
ラジオのパーソナリティをやってみたいという永沢。佐々木がゲストの歌手を演じるコントに入って行く。永沢の斜め上な大喜利力と佐々木の熱量あるツッコミで漫才が展開していく。ボケで笑いを取るところ、ツッコミで笑いを取るところとはっきりと分かれているタイプのネタで、ちょっと間が悪くなってしまったか。途中でナイツっぽく言い間違え中心になる部分があったのだが、そこが結構ウケがよかったのは収穫か。佐々木の何故かオネエっぽい顔芸ツッコミ「どうしよう!」の天丼や、「佐々木がまだツッコんでる途中でしょ!(北の国からトリビュート)」などひねったツッコミフレーズがそこまでハマりきらなかったのが痛いところ。出来は決して悪くなかったのだが、なんだかウケ切れないまま散漫になってしまった。コント入りしてから、佐々木がゲストとリスナーの両方の立場から突っ込んでいたのがわかりにくかったか。ネタ終わり、恒例の「はい終わりです」じゃないのね。頭から最後まで笑いを取れてはいたのだけど、これっていうキメがなかったのが問題だったんだろうか。しかし、磁石で生活できないっていうのは、完全に事務所のせいだと思うんだよなあ。『♪黙んな~い』


<Aブロック総評>
頭から最後まで笑いがあったのは磁石。当然国民ワラテンのシステムでは有利になって一票ゲット。しかし審査としては後半ノビたエレファントジョン、アキナに票が集中。これはちょっと漫才の審査としてはどうなんだろう…二組ともベストの出来ではなかったし、そこまで票が集中するほどか?という印象。特にアキナの開始1分くらいはだいぶしんどかったんだけどなあ。アキナの勝ち抜けに文句はないのだけど、もっと磁石にも票が行って良かったのでは。

それからもう一つ、志村けんの審査員コメント「ゆっくりで分かりやすい」であるとかテリーの審査員コメント「子どもにウケそう」というあたりで、今大会の審査基準が見えてしまったような。去年までのTHE MANZAIM-1での、「笑いの量」「熱さ」「技術・練習量」とは明らかに違う審査基準。いかに楽しく万人向けの漫才なのか、という基準で見てしまうと、ちょっとこれ以降の漫才師は大変なんじゃないか…Bブロックなんてトレエン以外クセ者ばっかりなんだから…なんて危惧していたらそれが現実になっていく。

僕が審査員ならこのブロックはエレファントジョン


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 Bブロック
トレンディエンジェル『人気が欲しい』
ここは大爆発しましたね。本戦サーキット1~3位の被った死のブロックをごぼう抜きで突破。前フリVTRが完全に今回の番組の審査基準と噛み合う内容で、「構成やストーリーの凝ったものではなくて、ギャグのオンパレードの楽しい漫才」と本人が言う通りの素晴らしい出来。ここまで気持ちよく突き抜けて爆発するトレンディエンジェルは初めて見ました。正直Bブロックの前座になっちゃうかな、と誰もが思っていたところ、斎藤さんが絶好調。ハゲネタをメインにしつつ、軽快な一発ギャグ、漫才的な掛け合いなど笑いどころは盛りだくさん。完全に客席を掴んでからは、一発芸が面白いようにハマっていく。途中でウィリアム王子をゴールデンでイジるという前代未聞のフレーズや、STAPいじりなど時事ネタも入れつつ、ハイテンポのジェットコースター漫才。斎藤が噛んだ後の須藤「死のうかと思った」はめっちゃくちゃ笑ったなあ。構成気にしてないとか言ってたけど、江頭の天丼だとか、ハゲネタとそれ以外の配分など、全体的にバランス良く受けていたように思います。見事。『斎藤、司の、頭が、ペッ』


②馬鹿よ貴方は『カレー』
僕も大注目しており、本戦サーキット東京ラウンドから話題になっていたネタ。彼らの武器は、ぎこちなく緊張と緩和を行き来していくネタ展開の中で、むき出しのフレーズがヒットしていく、というところにあるのだけど、ちょっと観客がそれを待ちきれない感じだったのだろうか。ところどころ、一番ヤマが欲しいところはウケていたのだけど、そこも男性の笑い声ばかりだったのが気になった。まあもっとも、淡々と繰り出される平井ファラオ光のキラーフレーズ、ブラックなボケは、決勝の明るさと合うわけもなかったのかもしれない。掴み切れなかったのが敗因のすべて。ファラオの出で立ち、キャラクターをプレゼンしきれないままネタに入ってしまったのがまずかったのかな。最初に自己紹介のブースを入れた方が結果的にはよかったといえるだろう。うーん、空気を思いっきり変える力はあったんですが。歌のところとか、もっともっとハネていいのになあ。イロモノに見えて、実は強いボケは全部三段落ち、言い間違え、替え歌などお笑いのルール、王道そのものなんですよね。だから幅広く受け入れられる可能性が十分にあった。会場よりもツイッターの方が反応いいってのはどういうことだ。こんなもんじゃないだろ、その1となってしまったコンビ。『ようこそゴールドジムへ』


囲碁将棋『肛門タオル』
これも予選で大爆発したネタ。このネタ、本当に凄いネタですよ。ボケとツッコミがなく、純粋なWボケの地獄絵図漫才。異常者同士の口げんか。話題を提示する文田が最初はボケ然としているのですが、本ネタに入るとどんな二択でも必ず肛門を選ぶ根建がボケになっていく。とてもテクニカルな展開。こういうお互いに意見を言い合うシステムっていうのは、例えばブラマヨとかハマカーンとか、過去に成功例もたくさんあるけど、囲碁将棋の武器は前例なき理屈っぽさ。そしてその理屈が全て通っているということ。着眼点の独特さなどは本当に評価されるべき点だと思うんですよね。もちろん、飯時にド下ネタをぶち込む、あまり配慮のない「肛門汁」というワードなど、責められるべき点はいくつかあったのは事実だし、客席を引かせてしまったのも事実なのだけれど、ネタのクオリティそのものがこれだけ高くて、こんなウケないかあ…。という感じ。どんどん客が引いて行って、「肛門締める」以降はそれこそ地獄絵図みたいなスベリ方に。もちろん本人たちも、このネタを掛けてる時点でギャンブルなのは分かっているはずですが。個人的には、文田の発想・ネタ作り・理屈の進歩っていう成長に根建が自然にアクセスしていった、というコンビとしての成長に物凄く感動して、これは優勝ネタクラスだなあと思って見ていただけに、残念。場所は?風呂!肛門!の天丼って本当に面白いと思うんだ。このバカバカしさ、天才的なんだけどなあ。こんなもんじゃないだろ、その2です。『タオルに肛門移動したの分かる?』


④学天即『電子タバコ~モテてる~尾崎~ラスベガス』
本戦サーキット1位、優勝候補筆頭でしたが、ちょっと雰囲気にのまれちゃいましたね。一つは馬鹿よ貴方は・囲碁将棋と爆弾(それも不発弾)が続いたやりにくい空気のせい。M-12010のジャルジャルスリムクラブ後の銀シャリ・ナイツを思い出しました。飛び道具が荒らした後の正統派はやりにくい。「そんな入り方珍しい」があまり普段漫才を見てなさそうな観覧には理解されなかったうえ、四条が「電子タバコ」を甘噛みしてしまったことで入りに失敗。ツッコミ主導で笑いを取って行くという学天即の仕掛けが浸透しきらないまま、何となく単発のボケツッコミのパッチワークをしてしまったような形になってしまった。奥田がハマりきらない以上、四条のボケが完全にフリになっていて、奥田のツッコミでオトす学天即の漫才はウケるはずもなく。結果的にテンポもどんどん乱れて行き、妙に落ち着いたテンポの四条に対して、ちょっとスベり気味に上ずってしまう奥田がちょっと噛み合わず。台本としては本当に面白いし、サーキットでの大爆笑を感じさせるネタではあったのですが、ここまで掴めないとは。そしてまあ、このネタは奥田のキャラ押しなネタなわけだから、ネタ自体に本筋があるわけではない。結果的に散漫な印象になってしまった。学天即奥田の打率って、普段もっと高いんだけどなあ。ウケてるのは動き込みのたとえツッコミの部分ばかりだったのも今後の指針になるか。こんなもんじゃないだろ、その3です。『尾崎二人時代』

<Bブロック総評>
出来の悪かった馬鹿よ貴方は、学天即。出来は良かったけどみるみる失速していった囲碁将棋。出来が良くてウケたトレンディエンジェル。そりゃあ、ジャイアントキリングも起こるわけだ。圧倒的大差でのトレンディエンジェル進出。

この結果だけ見て、「サーキットってやつの審査員おかしいんじゃね?」みたいなこと言う視聴者はいっぱい出るでしょう。僕から言い訳させてください、彼らも被害者。

もちろん、掴み切れなかった三組が悪い、といえばそれはそう、だけどちょっと今回の大会の客層は、わかりやすい笑いどころじゃないと笑わない客だった。ベタなボケや一発芸、フレーズボケには物凄く反応するけれど、間を使うボケやたとえツッコミには反応が薄く、男の笑いしか出ない感じ。これはもちろん、審査員の「分かりやすいのがいい」発言が序盤にあったせいもあるでしょう。とはいえ、分かりやすくて楽しいだけが「面白い漫才」の条件ではなく。テクニカルな漫才、構成やストーリーのよくできた漫才にだって見どころは当然あるわけで、そういう「仕上がった漫才」を評価する空気が一切なかったのはどうか、と。これはまた大会の総括で書きますが、今大会、ちょっと審査の基準や客の受け方が以前までのTHE MANZAIM-1や大会予選と違うんですよね。

僕が審査員ならこのブロックはトレンディエンジェル。個人的に好きなのは囲碁将棋。

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Cブロック
①和牛『がんばっていきましょう』
漫才の入りの定型文に攻撃をしていく十八番ネタ。とはいっても今日の客層や審査員にハマるわけもなく。これはスベるんじゃないか…と思ったら凄く出来がよく、ややウケくらいで何とか収まった。まあ、このネタの完成度で無理なら、今後THE MANZAIにおいて、メタ漫才で勝つのは無理だろう。一回アルコ&ピースがやっちゃってるのもある。和牛もこのネタより「結婚式」「宇宙人」あたりをやって居た方がウケたかな。もちろんこのネタも、「がんばっていきましょう」ワンアイディアの中に、逆転展開など様々にフックが利いていた。水田のコミカルな演技、川西のキレのいいツッコミ、二人の豊かな表情など、さまざまに見どころはあった。だが、このネタの欠点として、説明的な部分が長くなってしまうため、笑いと笑いの感覚が空いてしまうというのがある。そこがちょっと悪目立ちしてしまったか。彼らはまだ結成歴の若いコンビなわけで、今年が顔見せ、来年のTHE MANZAIM-1が本番、くらいのモチベーションで今後も頑張ってほしいですね。『売れたいなあ、言うてやってますけど』


博多華丸・大吉「YouTuberになりたい」
決勝進出者一番のベテランにして、ナインティナインと同期というのが歴史を感じさせるコンビ。予選でも話題になっていた凄く良いネタ。YouTuberになりたいという華丸さんに対して、大吉さんが丁寧にフリ、丁寧に突っ込んでいく正統派漫才。がなることも、怒鳴ることも、畳み掛けることもなく、丁寧に雰囲気を作って行く。二人のキャラクターが広く知られており、観客・審査員に受け入れられていることもあり、ホームな雰囲気。彼らのネタ作りの矜持、自然なネタ運び、日常から出ない題材選び、ボケ選び、随所にこだわりを感じる。ボケ数こそ少ないものの、一つ一つは外さずきっちり決めて行き、また設定自体がボケみたいなところがあるので、笑いとしては濃密。終始ニコニコしながら見られる漫才。「みなまでい言うな」の天丼など、平坦にさせない工夫もあった。そこまで傑出した出来ではなかったとはいえ、いつまででも見られるような安心感、安定感が評価された形で決勝進出。こういう若手の大会にオッサンが出て、オッサンが若手みたいな題材を使って、オッサンみたいな漫才をする、という裏の裏の裏のような新しさがあった。昨今の漫才大会では、いかに4分の漫才を通して、自分たちが何者であるかをプレゼンするか、がキーとなっている節がある。ゲスキャラをアピールしたウーマンラッシュアワー大喜利のセンスとアホらしい世界観をアピールした千鳥、男らしさと女らしさをアピールしたハマカーンなど、ここ数年THE MANZAIで結果を残しているコンビを振り返れば一目瞭然。その意味で、「彼らが何者であるのか」を丁寧に印象付けて行くネタは、実は古典的なようで最先端のものでもあり。『ヒルナンデス』

 
③ダイアン『職務質問』
本戦サーキットで2位を取ったネタ。職務質問のコント漫才。結構前からやっているネタなので、ちょっとバレてる感じもあったのか、あるいは単純に出来が悪かったか、場に合わなかったか、かなり厳しいウケに。良くも悪くもいつものダイアンであり、ワードセンス溢れる西澤のボケとか、オーバーリアクションに体いっぱいでキレる津田のツッコミとか、魅力はいっぱいあったのですが、客には響かなかった形に。「歯多い」の天丼はちょっとしつこく思われてしまったか。入ってくるタイミング、フレーズの違和感など、フックにはなっていたのだが。どうしてもダイアンって本番に弱いコンビ、ってイメージがあるなあ。今回の出場者のうち、一番印象を残せなかったのではないか。独特の雰囲気、独特のボケをするのだけど、トータルのパッケージとしては正統派であって、凄く良い漫才をしているのだけど、彼らの面白さとか空気が、まだ全国に通じる感じになっていないのだろう。千鳥はキャラクターでそこを突破した。ダイアンはどうやって殻を破るのか。『誤認逮捕が凄い多いの』


④三拍子『早押しクイズ』
ワイルドカードを突破したのは三拍子!いわゆるオンバト売れ残り世代、磁石や流れ星などと同じような境遇のコンビ。彼らの最大の強み、後半でグイーンとノビていく感じが出ていて、凄く良かった。ワイルドカードの勢いそのままに、テンポよく盛り上がっていた。早押しクイズの問題が答えに寄って行く、という発想一本で、後は大喜利のネタなんだけど、全体的にボケの出来が良かった。ティンカーベルの佃煮、と言うフレーズが入った時点で、大竹まことの票は取れたな、と確信しました。ネタのシステムを理解させたら、どんどん間を詰めて行ってテンポアップしていくスタイルはとても賞レース向き。ここが突破しても当然おかしくなかった。サンドウィッチマンの奇跡が一瞬頭によぎったのだが、ちょっとネタがバレていた感じもあったのか。あるいは「ねこ」の天丼が決まりきらなかったのが悪かったのか。しかしヤケクソ気味なボケの語り口、とても舞台映えするね。正月の漫才番組では引っ張りだことなることでしょう。あとまあ、こういう勢いのある漫才が大会の一番手にいたら、もっと早く客席が温まっただろうに、などと考えてしまった。ストレートで通してあげて問題ない出来だったなあ『森脇健児はバカヤロー』


<Cブロック総評>
勢いと盛り上げの三拍子、安定感と安心感の華大の一騎打ちという結果に。和牛も後半上がる感じで凄く良かったんだけど、票を得るには至らず。ダイアンはそもそも出来があまり良くなかった、といったところ。

結果的に華大が優勝してしまったから言えることだけど、三拍子は今大会実質二位っちゃ二位なんですよね。華大から票を4つ奪えているわけだから。これをきっかけにブレイクとかないだろうか。

ここでたけしのコメント、ベテランはまだまだやれる、スピードだけじゃなく、ゆったりとして面白いネタも良いよね、というのが挟まる。今大会の審査の傾向を感じさせる。リーダーは「技術が~」というコメント。リーダーは審査基準がM1時代からあまり変わってないのか。巨人は「点数にすると~」という明らかにM1を意識したコメント。さらには「勢いで三拍子がよかった」というコメントもあり、巨人師匠の審査基準もあまり変わっていないのだなあと。となると何なんだろう、この今大会全体に漂う、審査のちょっと?感の正体は…。

僕ならこのブロックは和牛。

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最終決戦
①アキナ『雪山で遭難』
一本目と同じフォーマットで、出来は一本目より良く、間も詰まって充実度の高い内容に。二本見て思うが、アキナの漫才はフリもツッコミも非常に丁寧で、一つのボケを前後から丁寧に重ね塗りしていくような形になっている。大喜利ボケを一本目より多めに仕込んでいるのも、システムが客に浸透した二本目だからこそ。動きボケの天丼なども凄く自然に決まった。一本目の出来では、正直例年なら最終決戦に残れていないのだが、この出来を二本目で出せるならば文句はない。ちゃんと印象を残せるコンビとなった。もともとこのネタは別番組などで披露していたもので、「ゲイやねん」「きしょい!」はちょっとテレビ的にどうなんだろう感はあったが高評価。ここでバチっとネタをはめるアキナの勝負師っぷりは凄く良い。ソーセージの件もあったのでまだまだ結成歴も若く、いつかM1を獲るであろうコンビ。今後もこの形の漫才をするのか、マイナーチェンジがあるのか、全く新しい型を作るのか、これからが楽しみなコンビです。『起きろー!(肩をゆすって)』


トレンディエンジェル『歌がうまい』
完全に一本目で会場を掴んでいたトレンディエンジェル、二本目も勢いで押して行った。「ゲイなんですよ」とアキナのウケたボケもツカミに利用。「漫才のテクニック」の天丼はちょっと客席に伝わらずいまいち。アクセントとなるはずの部分だっただろうから計算が外れたか。一本目に比べるとギャグが少なくて本筋勝負の漫才なのだけど、ちょっとそうなると弱いネタが多くなってしまう。彼らの最大の武器である顔ギャグ、一発ギャグをもっと放り込むべきだったかも。会場を味方につけていただけに、期待するような爆発どころがあまり来なかったのは残念だった。しかしトレンディエンジェルってネタの中に芸能人いじりとか入れてくるような攻撃的な人たちだっけか。見ないうちにボケのバリエーション増えたんだなあ。今大会で一番名前を挙げたコンビと言っていいでしょう。『トン、トン』


博多華丸・大吉『飲み会の抜け出し方』
一本目と同じ入りをし、「劇場の二回目出番じゃない」という業界ウケなやり取りから始まる。明らかに芸人ウケ、これで審査員を完全に掴む。本ネタは何度かテレビでも披露したいた鉄板ネタで、華丸オリジナルのことわざがガンガンウケるウケる。彼らの漫才は、実は千鳥と近いシステムなんですよね。決めフレーズを天丼していきながら、シチュエーションを移動していくコント漫才。この芸風、もしかしたら増えるかもしれない。やっぱり1つのフレーズを押せるっていう点で印象付けもしやすいし。今回の華大もワードセンスが完全にハマっており、華丸がボケるたびに客席が大ウケする形に。一本目で使われていた「サンドウィッチ」をオチに使うなど余裕も見せ、ほとんど完璧な出来。一本目に比べて客ウケも凄く上がっていた。『よその子とゴーヤは育つのが早い』

 

<最終決戦総評>
勢いのあったトレンディエンジェルは、やや一本目よりは落ちる出来。アキナは後半に強いと言う武器を出しつつも、まだそもそもの実力が優勝には足りていない感じ。結果として実力もあり客ウケも爆発的だった華大がそのまま順当に優勝ということに。大竹まことトレンディエンジェルに入れたのは、いつぞやのM1でオードリーに入れたのを思い出させる。ただまあ、3組ともかなり出来栄えもよく(そもそもトレエンは一本目が出来すぎ)、良い最終決戦だったなあと。そしてまあ、長々論じる余地もないくらい華大の圧勝でしたね。

僕が審査員なら博多華丸・大吉

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<大会総評 MANZAIのゆくえを決めるのは漫才師であれ!!!>
僕はこの大会全般を通して、審査員のコメントに不満があった。審査そのものにはあまり不満はない。全体的に低調な大会だったので、どうやっても消去法な審査が多く成る以上、あまり票が割れないのも仕方ない。ただ、審査員が「わかりやすい」「子どもにもウケる」などと口にするのはいかがなものか。

ちょっとバラエティ色が強すぎたんじゃないかな。これまでのM1やTHE MANZAIの審査基準は、「面白さ」「熱さ」「漫才の技術」だったはず。だからこそ、チュートリアルが評価され、ブラックマヨネーズが評価され、ウーマンラッシュアワーが評価されてきたわけで。今大会、そういう過去のチャンピオンに一番近い漫才をしていたのが博多華丸・大吉であることに文句はないのだけど、不遇を被ったコンビが、やや多すぎた。

バラエティなノリを出し過ぎたことで、賞レースだからこそ爆発する囲碁将棋や馬鹿よ貴方はのようなネタがいまいちキレを失い、「わかりやすさ」を求める審査だからこそ、たとえツッコミが武器の学天即は高評価を受けなかった。予選では漫才の構成やストーリー性や斬新さが評価される傾向のある本大会、予選と決勝でこうも審査基準が違うのはいかがなものか。

そしてまあ、見ていて思うのは審査員に非漫才師が多く、そして非漫才師が先述のような発言をしている、ということだ。志村けんの「わかりやすくていい」発言の直後に、大竹が「分かりにくいのがめちゃくちゃ面白い」と言ったのはまさに至言。シュールな笑い、アウトローな笑いを本気で突き詰めようとした人間だからこそ出せる言葉なのだろう。「分かりにくいけど面白い」「分かりにくいのが面白い」みたいな漫才を評価する人がもっといないと、審査員のバランスが悪くなってしまう。

そして全体的に、「若手は漫才にボケを詰め込んでハイテンポでやるばっかり」みたいな固定観念、ディスりが目につく大会だった。今大会でいうと、ボケを詰め込んでハイテンポとなると磁石、エレファントジョン、学天即あたりが念頭にあったのだろうか。ちょっとそういう発言をしすぎちゃうと、大会内でそういう漫才師が評価されにくくなっちゃうから、あんまり本番で言うことじゃないと思うんだよなあ。

うん、やっぱり僕は、審査員にMANZAI出身の人を増やしてほしい。漫才の未来にまで影響を与える大会。この大会の結果を見て、漫才師たちはネタの作り方を決めて行くのだから、そういう漫才の道筋を決めて良いのは漫才師だと思うんだよなあ。コント出身の審査員や、テレビマンの人たちが配慮なく漫才の行く末を限定しちゃいけない。そのへん、去年まで審査員だった秋元や高須あたりは考慮しているように見えた。(だからどんな漫才がいい、みたいな発言は控えていた)

審査員には審査員の矜持があっていい、だけど、大会の行く末や漫才の行く末を一挙手一投足、発言のいちいちが規定してしまうことを自覚した方がいいのでは、と思ってしまった。

後はまあ、「誰も傷つけない漫才がいい」「ゆっくりで聞き取りやすい」みたいな言葉は、ウーマンラッシュアワーに向けられたものなんだろうか…。彼らを評価し賛美した大会が、一年後に真逆の方向へ向かうというのは、ちょっとどうなんだろう、って思っちゃうなあ。うーん。去年の方が面白かったなあ。

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あとがき

3回見返して、一番笑ったのは囲碁将棋でした。僕は彼らの勇気とあれだけの完成度のネタを作り上げた手腕、才能に最大の拍手を送りたいです。

Taiki Obonai 2014-