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社会学専攻の京大院生の諸々

漫才を類型化する⑤「ショートコント型漫才」

漫才の類型化について、ここまでは特に「しゃべくり漫才」とされる、演者が役に入らない型式の漫才について語ってきました。しかし、漫才には他方、役に入りコントを演じる、「コント漫才」と言われる型式があります。今回は、話の進行に合わせてコントに入ったり出たりを繰り返す、「ショートコント型漫才」について紹介します。

コント部分としゃべくり部分の両方を含む「ショートコント型漫才」においては、コントとしゃべくりの両方で笑いを取る必要があります。それぞれどうやって笑いを取っているのか、またどうやってスイッチしているのかなどに注目しながら、いくつか漫才を見ていきましょう。

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【しゃべくりターンとコントターン、それぞれに天丼を仕込む】
名作漫才① 流れ星「帰省・肘神様」

この漫才は、THE MANZAI2013にて披露された流れ星の漫才であり、彼らのブレイクのきっかけとなったネタです。「帰省」あるいは「肘神様」「肘祭り」の名称で知られています。M-1グランプリでは一回も決勝に上がれなかった彼らですが、M-1時代からこのネタは存在しています。彼らのベストネタを、最高の舞台で練り上げてブレイクしたわけですね。格好いい。

さて、このネタですが、役に入るターンと入らないターンを繰り返しスイッチしていることがわかります。ネタの展開を整理してみましょう。

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①しゃべくり
状況設定と役の説明など手続きの部分。ちゅうえいが一発ギャグ芸人であることもここで提示。

②コント 0:50~
ちゅうえいが「じいちゃん」の役に入り、帰省のシチュエーションでのボケ。これに対するツッコミは、「孫」の視点ではなく「瀧上」として行われる。

③しゃべくり 1:10~
一発ギャグが「ちゅうえい」によって提示される。

④肘神様 1:20~
流れ星の誇るキラーコンテンツ「肘神様の踊り」が投入。ここでは「じいちゃん」として踊っている。

⑤しゃべくり 1:40~
コントへのツッコミが「瀧上」からなされる。もう一度一発ギャグの挟み込み、ここは「ちゅうえい」によるもの。

⑥コント 2:10~
じいちゃんがクラブに行く件のショートコント。状況を提示するツッコミが挟み込まれて、乾杯のコントに。ここで「空襲」の天丼。

⑦しゃべくり 2:40~
顔芸のくだりが挟み込まれる。

⑧肘神様 3:00~
コントに戻り、ここで初めて瀧上が「孫」の役に入る。これ以降は、オチまで役から出てこない。二人で肘神様の踊りを踊るところがこのネタのハイライト。

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こうして整理すると、流れ星のこのネタはしゃべくり部分とコント部分をスイッチしながら展開しており、しゃべくり部分では「空襲」が、コント部分では「肘神様」がそれぞれ天丼されていることがわかります。それぞれのブースで一番よいボケが天丼されていることで、後半に向かってウケが増して行く理想的な形になっています。「この漫才のサビ・見どころはココ」という提示が自然になされている、素晴らしい漫才です。

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【コントの設定自体がボケになっているボケ合戦】
名作漫才② 笑い飯鳥人


この漫才は、笑い飯M-1グランプリ2009において最高点を獲得したときの漫才です。「鳥人(とりじん)」の名で呼ばれる、彼らの伝説ネタの一つです。ショートコントへの出入りを繰り返すたびに、コントでの役職も、ボケ・ツッコミという漫才での役割も入れ替わって行くのは笑い飯独自のスタイル。

このネタの秀逸な点は、まず「コントの設定」そのものにファンタジーが含まれているという点です。絵と言葉の両方で笑わせる、マンガチックな笑いだと言えます。

そして、その「コントの設定」である「鳥人」について、演者である本人たちは不自然なほど自然に受け入れているのに(「大体わかったからやらせてくれ」)、役に入った途端、「お父さん!バケモンでたよ!」といった拒絶のリアクションを取っている点も見逃せません。仕切り直しの連続となる「ショートコント型漫才」において、コントとコントの幕間の部分、切り替わりの部分でどう笑いを持続させるかは重要な課題です。笑い飯はその点について、「設定の受容or拒絶」によって笑いを確保することに成功しています。

また、設定自体が奇抜なボケを含んでいるために、本ネタ部分のボケは「チキン南蛮」「飛べやしないけどね」などといったくだらない物であればあるほど面白味が増す、という仕掛けも効いています。

鳥と人との融合、という「鳥人」にまつわるボケが一通り展開し、ネタのシステムを理解させきったところで、「新沼人鳥」「手羽真一」といったシステムでの遊び、ルール自体への攻撃が始まり、話が回収不能になってオチとなる流れも非常に美しいですね。

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 【ボケがコントから出て来ないことでテンポアップ】
名作漫才③ NON STYLE「ヤンキー」


この漫才は、NON STYLEM-1グランプリ2009で披露したネタです。序盤30秒までの導入は石田・井上で喋っていますが、それ以降は役に入って行きます。そこからは石田はずっと役に入ったまま出て来ず、石田本人としての発言は全くありません。一方で、井上は役に入ったり、役から出てツッコんだり、あるいはナレーションの役目もしていたりと、かなり多様な仕事をこなしています。井上の技術によって、コント・しゃべくりのスウィッチがスムーズに行われており、ボケ・ツッコミのやり取りを出来るだけ多く詰め込むことに適しています。

実際、お笑いファンの間では、NON STYLEは手数を重視する漫才の代表格だとされています。4分間のネタの中に、30以上の笑いどころを挟み込むテンポは、若手ではナイツと並び最高レベルです。テンポを上げるために、NON STYLEの漫才では長い「フリ」はあまり用いられません。「フリの小さいボケ」を横に重ねることでリズムを作り、強いボケを縦に天丼して盛り上がりを作っていく仕掛けです。ひとたび漫才に巻き込まれれば、ずっと笑って居られるような仕組みになっています。

一方で、NON STYLEの漫才における最大の弱点は、一発一発の軽さです。軽快でノリの良い漫才であるぶん、設定や一つ一つのボケに引っかかりがありません。印象に残りにくい、安定して笑いは取れるが大爆笑に至りにくい、といった欠点と隣り合わせです。そこで彼らはネタの中に「井上いじり」や「ボケが多いことへのメタ発言」などを導入し、アクセントにすることがあります。こうしたNON STYLEの手法は、今や多くの若手芸人が参考にしている部分です。

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 【4コマ漫画の連続・はっきりした段落の存在】
名作漫才④ ウーマンラッシュアワー「バイトリーダー」


この漫才は、ウーマンラッシュアワーの出世作として知られている「バイトリーダー」漫才です。ABCお笑いグランプリ、THE MANZAI2011など様々な賞レースで披露されており、彼らの名を世間に知らしめたネタですね。

このネタもショートコント型の漫才だといえます。ボケの村本によって設定の導入やコントの紹介が行われ、その後は村本のワードセンスを活かした早口ボケをベースにして漫才が展開していきます。ツッコミの中川パラダイスは特に明確にツッコむことはせず、リアクションがメインとなっています。

このネタの特筆すべき点は、「状況の設定」「中川パラダイスの混乱」「村本のアシスト」「村本の失敗」という流れが繰り返されている、という点です。言ってみれば、「起承転結」のしっかりした4コマ漫画の連発、というような構成になっているわけですね。このネタに限ったことではなく、ウーマンラッシュアワーのネタには明確に「段落」があります。ここからここまでは①の件、ここから②の件、というような区別がなされていることによって、観客に笑いどころを分かりやすく提示することに成功しています。村本がどこでボケるのか、どこで失敗するのかを観客は知っていて、観客の想像を一つずつ越えて行くことで笑いが生じる、という仕掛けです。

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 ここまで、ショートコント型漫才の名作を紹介してきました。ショートコント型漫才はリズムを作りやすく、またネタの種類も無限に作ることができるという点で、非常にポピュラーな漫才の様式です。今後も、ショートコント型漫才でとても面白言漫才をするコンビが出てくることと思います。ここから、ショートコント型漫才のネクストブレイク候補生を紹介していきます。

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大喜利を取り入れたショートコント】
アキナ「遭難」


キングオブコントでも決勝に進出した「アキナ」の漫才です。基本的な型はNON STYLEに近いものであり、ツッコミの秋山は「本人としてのツッコミ」「状況の設定」「役に入っての演技」の三役をこなしています。さらにNON STYLEとの大きな違いとして言えるのは、アキナの漫才ではしっかりしたフリのある大喜利ボケが存在するということです。「ここで~な言葉!」「〇〇」といったフリのしっかりした大喜利ボケは、爆笑を呼び込みやすい部分だといえるでしょう。THE MANZAI 2014では決勝進出候補に挙げられています。楽しみ楽しみ。

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【緊張と緩和のショートコント型漫才】
馬鹿よ貴方は「肉屋」


THE MANZAI 2014で決勝進出当確ランプが出ている「馬鹿よ貴方は」の漫才です。ショートコントを連発する形式で漫才が展開しています。途中でしゃべくりとなる部分が挟み込まれ、アクセントとなっています。「ウイーン」がコント入りの合図となっている点は、分かりやすく見せる工夫でしょう。ボケは独特の方向性で、ブラックなボケが多いが、随所でお茶目なボケが挟み込まれています。それによって「緊張」と「緩和」のふり幅が生まれています。

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 【不条理ショートコント漫才
マヂカルラブリー


不条理なボケ方に特徴のあるコンビです。ネタの構造は、ツッコミの村上による状況の設定、コント入り、野田の不条理ボケ、村上の説明的なツッコミを繰り返すスタイルです。見える形としては全く違いますが、構造はウーマンラッシュアワーのバイトリーダーと近い構造になっています。大きく違う点はボケの斜め上さ。この世界観が受け入れられる日は来るのでしょうか。

Taiki Obonai 2014-