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僕が本当に面白いと思うこと

6月3日に京都で一人コントライブします。よかったらどうぞ。

漫才を類型化する②「プレゼン型漫才」

前回、『大喜利型漫才』についての記事を書いたところ、『好き』と言ってくれる人がいたので、せっかくなので第二弾。今回は、『プレゼン型漫才』について、秀逸な漫才師・名作漫才を紹介しながら解説していきます。

『プレゼン型漫才』というのは、ボケまたはツッコミの一方が、特定の話題についてプレゼンテーションするのを基盤とした型の漫才です。笑いの取り方としては、『プレゼンテーションをする側がボケる』というナイツ型、『プレゼンテーションを聞く側がボケる』というオードリー型に大きく分類されます。まずはナイツ型から見て行きましょう。

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【誤りを含むプレゼンテーションとその修正】

名作漫才① ナイツ「ドラマ」



この漫才は、THE MANZAI2011最終決戦にて最高点を獲得した漫才です。プレゼンテーションの言い間違えというスタイルを磨き上げてきたナイツの一つの到達点、最高傑作と言えるネタでしょう。

ネタの全体的な構造としては、『ドラマが好き』というお題の提示ののち、『動きボケ』『イントネーションボケ』『言い間違えボケ』『ものまねボケ』というこのネタを構成する四種類のボケを順番に一つずつ散らし、その後は有効にカブセを使いながら話題を展開していく、と言うもの。塙のプレゼンテーションには間違いばかりで、それを土屋が訂正していく、という形を取ります。

部分部分としてみると、塙主導で笑いを取りたい部分と、土屋主導で笑いを取りたい部分とが、物まねのカブセがあるごとにスイッチされていることがわかります。『段落のある漫才』と表現できるかもしれません。単調に見せないための仕掛けでしょう。

特筆すべきことは、塙は一切、土屋の言葉を聞いていないという点です。この漫才には、掛け合いは一切ありません。塙⇒観客のプレゼンテーションと、土屋⇒塙の訂正以外に会話の方向がないのです。これはとても特殊な漫才のシステムで、一切会話をしないで繰り広げられる漫才というのは、ちょっとナイツ以外に思いつきません。

漫才で盛り上がる部分、音楽で言うサビをつくるためには、ふつう、掛け合いの中で感情をヒートアップさせる必要があります。例えば、一方がキレる(ハマカーン)だとか、両方がキレる(ブラックマヨネーズ)だとか、テンションがあがる(チュートリアル)だとかのようにです。

しかしナイツの漫才のフレームにおいては、感情をヒートアップさせることはできません。会話がそもそもないのですから。だから、漫才の『サビ』を純粋なワードの面白さ、鋭さで作るしかありません。その試みは、見事最後の不謹慎ネタで成功しています。ボケ・ツッコミともに言葉の精度が高く、さらには動きボケも導入されており、笑いの手数・質ともに伴った素晴らしいネタです。

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【信用できないプレゼンテーター】

名作漫才② パンクブーブー「万引き」



このネタは、M-1グランプリ2010にてファーストラウンド最高得点を獲得したネタです。前年のM-1で優勝したものの、ネタにオリジナリティがないことを指摘されてしまったパンクブーブーが、自分たちのスタイルとして開発したのがこの形式の漫才です。これもまた、語り手があくまでもボケの佐藤に固定される、プレゼン型漫才だといえます。語り手がボケなので、分類上はナイツ型の漫才です。

ただ、ナイツと大きく異なるのは、漫才全体が1つのストーリーになっている、という点です。ナイツの場合は、話題を数多く転がしながらボケを連打していくシステムですが、パンクブーブーのことのネタは、あくまで1つのエピソードに沿った構造になっています。ボケの仕掛けも、言い間違えやイントネーションといったナイツ塙のものとは種類が異なり、文構造や叙述トリックなどに関係するものがメインです。

ネタの中身を見て行きましょう。大筋は、万引きに遭遇した、という佐藤のプレゼンテーション。しかし、佐藤のプレゼンテーションは、文末に必ず裏切りや新情報の提示があり、状況が伝わりにくい…。1分過ぎまでは、佐藤の文末表現の裏切りのボケのみで構成されていますが、それ以降は、状況自体のおかしみがどんどん提示されていきます。聞き手に徹する黒瀬は、観客の目線で疑問を提示したり、正しい読み取り方を提示してみせたり。もはやこれはツッコミではなく、ボケの解説であって、むしろ黒瀬が状況を説明するごとに笑いが起きる後半においては、黒瀬はボケ的ですらあります。

このネタで凄いのは、プレゼンテーターである佐藤に対する黒瀬のアシストの素晴らしさです。序盤でこのネタの仕掛け、笑いどころを分かりやすく観客目線で提示し、さらに中盤以降は自分でも笑いを取りに行く、という構図の反転を自然にこなしています。

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【プレゼンテーションに対する邪魔とキャラクターの強み】

名作漫才③ オードリー「引っ越し」

 

このネタは、M-1グランプリ2008年でファーストステージ最高点を獲得した漫才であり、オードリーの出世作。オードリーのネタは、ナイツやパンクブーブーと分類上同じ、プレゼン型の漫才です。あくまでも若林のプレゼンテーションが会話の中心にあります。

オードリーのネタの構造は、若林のプレゼンテーションに対して春日がツッコミをしていく、という構図です。ただ、その春日のツッコミ方、茶々の入れ方がズレており、それを若林が訂正したり、受け流したりしながら展開しています。春日が自分のことをツッコミだと認識している、というのがポイントです。

ネタの圧倒的なテンポ感を演出しているのは、相互に叩き合うツッコミの応酬です。ボケ・ツッコミともにフレーズは短めで、間を取らずにボケが詰め込まれているところに工夫を感じます。一つ一つのやり取りが速い分、軽くなってはいるのですが、そこに「厚み」を与えているのは、春日のキャラクターでしょう。これだけ濃密なネタなら、そりゃあM-1で1位なります。

叩き合いのツッコミはともすれば喧嘩にも見えてしまうのですが、随所で入れられる「えへへへ」の天丼がネタに柔らかさを与えています。またネタの後半で春日が噛んだところさえ笑いになるのは、邪魔漫才であることの利点ですね。若林のフォロー能力にも光るものがある。キャラクターを持った春日と、それを操る知性をもった若林という、現在のテレビでのバラエティ適性を予感させるネタですね。

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【ドラマチックに展開する逆転漫才】

名作漫才④ オジンオズボーン「ファッション」

 このネタは、オードリー型の、『プレゼンを聞く側が不適切』という型でスタートします。高松のプレゼンに対して、篠宮がひたすら邪魔をしていく構成。ただ、オードリーとは邪魔の仕方が異なり、より幼稚で、言葉遊び的なものが多いことがわかります。また、邪魔の中で「カーテン」の天丼があるなど、メインのプレゼンとは別のサイドストーリーが邪魔によって構成されていることがわかります。笑いどころの配置を見るにつけても、このネタにおいては題材が「ファッション」であることにあまり必然性はありません。あくまでも話題ベースでネタを展開するオードリーと比較すると、よりボケを詰め込みやすい型だといえます。

そしてこのネタの特筆すべき点は、後半の展開です。序盤は【高松プレゼン⇒篠宮ボケ⇒高松ツッコミ・プレゼンに戻る】という構造だったのですが、後半は高松もボケに加わります。【高松プレゼン⇒高松ボケ⇒篠宮ボケ】というボケ合戦に展開し、さらには【高松プレゼン⇒高松ボケ】という「篠宮封じ」に展開していく。

これは凄まじい発明です。もともと先ほど述べた通り、プレゼンテーションの中身自体はどうでもいい構造の漫才なのです。そうである以上、ネタに「熱さ」を出すためには、感情や人間関係上のドラマチックな展開が必要なのです。ネタ中盤からのボケのバトル展開の熱さ、加速度には物凄いものがあります。どんなストーリでも結局バトルものになる、ジャンプ漫画チックな漫才です。

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【キャラクターを踏まえた詭弁漫才】

名作漫才⑤ ウーマンラッシュアワー「相方紹介」


このネタは、ウーマンラッシュアワーがTHE MANZAI2013で優勝した際のネタです。ボケの村本のプレゼンテーションにボケの中川パラダイスが言いくるめられていく、詭弁漫才という構図を取っています。ボケの村本はバラエティでゲスキャラでブレイクしていますが、その性格がネタの中でも発揮されていますね。こういう漫才で出世すると、バラエティでウケやすくなります。

このネタについて、志村けんが「早口すぎて聞き取れない」とラジオで評価したことは有名です。また、ネットでも面白さが分からないという声がそれなりに出ました。しかし、このネタは評価されてしかるべきネタです。そして、大いに誤解されているネタでもあります。

ウーマンラッシュアワーはその早口さゆえに、「手数で勝負するタイプの漫才」だと思われがちです。しかし、ネタを見ていただければわかる通り、一つ一つの村本のフレーズが長いので、ボケの数自体は多くないのです。手数を武器としているNON STYLEパンクブーブートータルテンボスなどに比べると、フリが長く、ボケ自体も長いものになっています。そして、ボケには明確に段落があって、笑いどころが分かりやすくなる仕掛けがしてあります。これは、一つ一つのボケごとに大きな間を取り、笑いどころを明確にしたスリムクラブと、真逆ではあるものの同じ系統の戦略だといえます。

村本が詭弁で中川パラダイスをまくし立て、畳み掛けるようにして悪者に仕立てて行く様は痛快です。村本という質の高いプレゼンテーターがいることで可能となる、ウーマンラッシュアワー独自の漫才だといえるでしょう。

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【ツッコまないというボケで構成されたスカシ漫才】

名作漫才⑥ とろサーモン「昔ワルかったんだ」


このネタは、プレゼンテーターの村田がツッコミ、聞き手の久保田がボケと思わせて、実は途中からプレゼンテーターがボケに転じている、という独特の構造を取った漫才です。序盤は久保田のボケを村田がスルーしたり、いなしたりしながらプレゼンをしていきます。ちゃんと突っ込んでいる箇所は一か所も無い。

中盤から、久保田がスルーされ過ぎている、という展開に入ります。久保田のボケのクオリティの低さ、うっとうしさを考慮してもなお、さすがにツッコミが冷たすぎるのではないか、と観客が思い始めたところで、村田がボケに回ります。ツッコミが全く拾わない、というのはそれはそれでボケになるんですね。

とろサーモンの漫才はツッコミとボケとの人間関係の展開を楽しむタイプの漫才です。プレゼンの話題や内容自体には深い意味はありません。ボケが無視されるさま、ツッコミが冷たいさまを見て笑う漫才です。とても複雑な構造なのですが、一本のネタの中で自分たちの芸風をしっかりと濃縮して伝えきっているのは物凄いテクニックです。

唯一問題としては、やはり喧嘩をしている感が強く出てしまうということでしょう。「えへへへへ」が要所で入るオードリー、ボケ合戦に展開するオジンオズボーンに比べると、やはり「いじめだなあ」「かわいそうだなあ」感をフォローする仕掛けが足りないといえるかもしれません。上述の2コンビより、やり取り自体の質は高く、とても面白いネタではあるのですが、テレビに乗せるには少しハードルがあるかもしれません。

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【まだまだある!プレゼン型漫才の紹介】

エレファントジョン「思い出」


プレゼンに邪魔が入って行くスタイルの漫才ですね。ボケの質が低ければ低い程面白くなるような展開なのはオードリーやオジンオズボーンと同じ形。やりとりに無駄がなく、天丼も巧みに仕込まれています。

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エルシャラカーニ「???」


プレゼンテーターが信用できないタイプの極致ですかね。プレゼンテーターがめちゃくちゃなことを言って、ツッコミ役は翻訳や補い、助けをしていくという構図。

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ここまで見ていただいてわかるように、プレゼン型漫才の武器は「ボケを詰め込みやすい」「キャラを仕込みやすい」「観客に向かって話しかけるブースを入れられるので観客を巻き込みやすい」ということです。大きなウケを狙うこともできるので、今後も開拓の余地があるジャンルだと思います。

逆に弱点としては、作り込みの難しさがあるでしょう。プレゼンで面白さを出すためには技術も要るし、キャラクターか台本のどちらかにおいて高い完成度が求められます。コント入りする漫才や、純粋な掛け合いの漫才に比べると、シチュエーションの面白さ・設定の面白さを使うことができない形式なので。

今後も、プレゼン型の高水準な漫才が生まれてくることと思います。プレゼン型でめっちゃシュールとか面白そう。

 

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この記事のかなりあとですが、僕もお笑いライブをはじめました。よかったら僕の漫才もご覧ください。

 


カフカの時事漫才(2017春)

Taiki Obonai 2014-